その意味で途中まで協議に参加していたエジプトが、最終的にはメッカ合意に署名しなかったのは興味深い。これは、最近非常に影が薄いエジプトが、「覇権国」となる夢を捨てきれていないということなのか。それとも、キャンプデービット合意(1978年)からほぼ半世紀近くイスラエルと国交を正常化してきたことから、イスラエルと敵対することになり得る合意への参加に躊躇したか、または米国から止められたのか。
一番難しく一番重要な核問題
第三は、核拡散との関係である。米国が米サウジアラビア合意でサウジアラビアにウラン濃縮の権利を認めたのには驚かされたが、核拡散との関係ではこれ以上の悪手はない。その一方でイランの濃縮を全く認めないというのでは、どう考えても上手く行かないし、UAEも現在の米国との合意の再交渉を求めるのは確実だ。
本来、イランとの戦争を本当に終わらせたいなら、まずは一番難しく一番重要な問題である核兵器の問題を先に解決すべきだ。換言すれば、核兵器の問題が解決しない限りは、その交渉でイランが持つほぼ唯一の梃子であるホルムズ海峡のコントロールを諦めるはずがないし、核兵器問題が解決すればホルムズ海峡問題の解決は相当簡単になるのである。しかし、米国がやっていることは、選挙対策のためにホルムズ海峡問題解決を優先するだけでなく、核問題の解決を一層困難にしている。
この関係で言えば、核兵器国であるパキスタンと相互防衛条約を結べば、サウジアラビアは「核の傘」を手に入れるのであり、少なくとも「論理的には」サウジアラビア自身が核兵器を持つ必要性は減少する。トルコはNATOの一員であり、領域内に米国の核兵器が配備されている国の一つなので、追加的な核の傘は要らないはずだ。逆に、トルコが紛争に巻き込まれればNATOも巻き込まれる。
パキスタン・インド戦争の発生は、NATOにとっても悪夢だろう。一方、エジプトのメッカ合意不参加は、覇権争いでトルコ・サウジアラビアの軍門に下らないということのみならず、核兵器国化することを諦めていないことを意味するのかもしれないのが心配だ。
最近だけでも、シリアがロシアによるシリア領内の軍事施設使用を認める新合意を結んだり、トルコがクルド人との和平交渉を進める国内法を採択したりと、中東では色々な動きがある。ただ、全ての途はイランに通じている。米国には対イラン交渉で寄り道をしている余裕はないはずだ。
