2026年9月24日(木)

脱「ゼロリスク信仰」へのススメ

2026年9月24日

 厚労省はマグロ類などを規制値の適用対象から外したのだ。そしてメチル水銀の耐容摂取量を2.0μg/kg体重/週に設定して、「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」で、クロマグロ、メカジキ、キンメダイなどは週1回程度(1回約80g)、バンドウイルカであれば2カ月に1回程度にしましょうなど、摂取の目安を示している。

メカジキもメチル水銀は含有しているものの、食用へは量のみの規制となっている(bhofack2/gettyimages)

 要するに、水俣湾の魚類のメチル水銀量は暫定的規制値で規制し、マグロ類とキンメダイなど一部の魚についてはこの規制値を適用せず、耐容摂取量で規制をするという異なった方法を採用しているのだ。その理由は、水俣湾については汚染を少なくするために厳しい規制値を使う一方で、それ以外の地域では多くの魚が食用禁止になる事態を避けるための政策的なダブルスタンダードと言われる。

安全の確保はできたが……

 次に、熊本県と水俣市の対応を検証する。まず、対応の早さである。噴出土砂から水銀が検出されなかったという検査結果を公表したのは、7月28日の地震発生から約3週間後の8月18日である。地震後の大きな混乱の中で事態を把握し、緊急に通行止めなどの対応を行い、水銀の分析結果を得て公表した経過を考えると、約3週間という時間がかかったこと自体を遅いとは言い切れない。

 2番目は情報公開の範囲である。熊本県と水俣市の公式サイトを確認した範囲では、8月18日の水銀不検出の発表も、9月15日の「封じ込めの機能に問題ない」という説明も、一般向けの記事として掲載されている形跡は確認できなかった。「水銀不検出」の情報は、県庁担当の記者に伝えられたと推測され、「水銀を封じ込める機能に問題ない」という説明は、被害者団体、環境省、熊本県、水俣市が定例的に情報交換を行うための水俣病実務者協議に対して行われた。つまり、一部の情報はメディアだけに伝えられ、一部の情報は被害者団体との協議の場にとどまり、行政自身のウェブサイトなどを通じた一次情報の発信が行われていないのだ。

 情報の内容も、「水銀は不検出」「封じ込め機能に問題ない」という結論にとどまり、どのような調査を行ったのか、その詳細が十分に示されていないという問題がある。行政としては「調査した」「問題なかった」という事実を伝えたつもりでも、受け手からは「なぜそう言えるのか」が見えないというすれ違いが生じる。


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