06年の初版のレビュー発表後20年を経て、第3版となる26年の最新レビューでは、無症状の男性に対するPSAを用いた前立腺がんスクリーニングの有効性と安全性を検証した。
世界中から言語の制約を除いて検索された1万6260件の研究報告から重複を除き、研究デザイン、対象、比較可能性などの厳密な基準でふるいにかけられた結果、わずかに2件が残り、それに第2版のレビューの対象の中から採用された4件を含めた合計6件のRCTが今回の分析対象となった。
その内訳は、欧州8カ国(約16.2万人)、米国(約7.7万人)、スウェーデン(約2.7万人)、カナダ(約4.6万人)、英国(約40.9万人)、フィンランド(約6.1万人)でのRCTであり、総計78万2456人にのぼるデータが分析された。追跡期間は、1件(計画15年のところ3年目)を除く5件で11年以上、最長23年だった。
数々の障壁と過剰医療へ向かうリスク
しかし、このような超大規模RCTをもってしても明確な結論を得るまでには数々の障壁が存在した。
第一に、研究デザインの質とバイアスの制御である。過去のレビューに含まれていた研究であっても、RCTが厳密に行われていなかったものは選択バイアスのリスクがあるため分析から除外された。
第二に、「対照群の汚染」である。米国では、対照群(当初はスクリーニングを受けないとされていたグループ)の多くがさまざまな理由から自主的にPSA検査を受けてしまったため、事実上「高頻度スクリーニング」と 「低頻度スクリーニング」の比較となり、効果が過小評価された可能性がある。
第三に、数値解釈の複雑さである。追跡期間23年と最長の欧州8カ国の分析でPSAスクリーニングの受診者1000人あたり2人の前立腺がん死を防ぐ効果が示され、全RCT統合解析でも同様の結果が確認されたものの、前立腺がん以外の原因も含む全死亡率への明確な低下効果は認められなかった。さらにスクリーニングは早期前立腺がん発見率を顕著に増加させ、全体として1000人あたり36人多くの癌患者を診断することが判明した。
スクリーニングによって多くの早期がんが診断されることは歓迎されるべきことと理解されやすい。実際に日本では、がん検診を受けるように勧める際に行政や医療側がよく使うロジックである。
しかし、前立腺がんのようにその多くがゆっくりした進行のために寿命に影響を及ぼさない種類のがんでは、早期診断は、「がんを持って生きる」ことの心理的負担と、(もしかしたらする必要がなかった)さらなる検査や治療という過剰医療へと向かわせて、心身および経済的負担を強いることになる。
スクリーニングをする前に、将来進行するがんか否かを見極める方法についての研究については多くが進行中ではあるが、まだ決定的なものは知られていない。
