2024年12月22日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年8月25日

 7月7日付の仏ル・モンド紙で、Sylvie Kauffmann同紙論説主幹が、BRICS首脳会議では、中国が主導して、ブレトン・ウッズ体制に挑戦した新しい金融制度を設立することが協議されるだろう、と述べています。

 すなわち、7月15日、ワールド・カップが終了したブラジルでは、BRICS首脳会議が開催され、ブラジル、ロシア、インド、中国及び南アフリカの新興国5カ国が集う。非公式ではあるが、制度化されつつあり、第2次世界大戦後に設立されたブレドン・ウッズ体制に基礎を置く国際秩序への初めての深刻な挑戦となりそうである。

 7月15-16日、BRICSの首脳は、設立予定の将来の開発銀行の本拠地を決めることになろう。どこになるか。上海は有力候補である。銀行設立の資本金としては、各国とも平等に500億ドルずつ負担するだろう。が、同時に、BRICSは、金融危機に備えて、1兆ドルの緊急基金を設けることを考えている。そこでは、中国が最大出資者として410億ドル負担する。従って、外貨準備高を誇る中国が、将来の銀行の本部を主張するのは、ごく自然のことである。

 そして、その中国には、もう1つの銀行設立のプロジェクトがある。それは、地域の銀行で、アジア・インフラ投資銀行と呼ばれるものである。これは、ともするとBRICSの銀行よりも先に日の目をみるかもしれない。何故なら、多国間組織ではあるが、中国が創設者で、主要な基金の提供者であるから、効率が保証されている。習近平主席がこの提案をしたのは、2013年10月にインドネシアを訪問した時だった。そして、この提案は、中国の財務相Lou Jiwei(楼继伟)及び投資基金の出資者であるChina International Capital Corp(CICC中国国際金融有限公司)のJin Liqun(金立群)によって具体化しつつある。

 この2つの銀行の共通項は何か。それは、どちらも、米欧日に支配されたブレトン・ウッズ体制以降の国際金融システムに対して、もう1つの選択肢を与える組織となる点である。たとえ、今回の首脳会談で銀行がすぐに設立されることがなくても、その気運は高まっているようである。

 中国人たちは巧妙である。将来のアジア・インフラ投資銀行は、日本人が支配しているアジア開発銀行の直接のライバルとなるだろうが、それについて、中国の財務相が語る時は、大変慎重である。必ず、アジア・インフラ投資銀行は、アジア開銀及び世銀を補完するものとなる、と述べる。アジア開銀や世銀は、貧困撲滅のためのプロジェクトに優先的に出資するが、アジア・インフラ投資銀行は、主に、アジアが特に必要とするインフラに出資することになろう、と中国側は説明する。おまけに、この借款は、中国の内政不干渉政策によって、政治的条件も付かなければ、人権尊重を要求することもない、と中国側は、そっと話してくれた。


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