アボット豪首相は、米豪の軍事協力を強化する一方で、中国との経済関係を推進し、米中間でうまくバランスを取っており、それにより中国が米豪同盟を脅威と見る度合いが小さくなっているようである、とDiplomat誌のティエッツィ編集委員が、6月14日付け同誌ウェブサイト記事で述べています。
すなわち、米豪首脳会談の後、オバマは、米豪は両国間の軍事協力を高め、両国が地域で力を及ぼせる範囲を拡大する軍事態勢に関する追加的協定について合意に達した、と予告なしに発表した。オバマもアボットも、新しい兵力配備取極めの詳細を明らかにしていないが、The Australian紙は、新しい合意は、ダーウィンにローテーション配備される米海兵隊の人員数を増加させ、また、豪州の港を米国の駆逐艦に開放することになるであろう、と報じている。
北京は、米国のアジアへのリバランスを、「封じ込め」を薄いベールに包んだものと看做しているので、米軍のアジア太平洋におけるプレゼンスの増大というニュースに接すると、通常、中国から非難が噴出する。米海兵隊がダーウィンに駐留することになるとの2011年の発表の際は、中国外交部は、軍事同盟の強化、拡大は適切なことなのか、と問題視し、環球時報も、豪州の基地が米国によって、中国の国益を害するのに使われれば、豪自身が一斉射撃に遭うことになる、と警告した。
しかし、今回は、もっと穏健な反応である。外交部の報道官は、アジア太平洋地域は全ての者に属し、地域が平和、安定、繁栄を維持することは、各国の共通の利益である、と強調し、新華社は「中国は米海兵隊の豪への展開に希望を持っている」と題する短い記事の中で、それを引用した。他の中国メディアのレポートは、FTA交渉における前進が約束されていることを含め、豪州と中国の強力な経済関係を強調した。アボットは、多くの豪首相の前任者たちよりも、中国に対して友好的である、とのコンセンサスが中国にはあり、それにより、中国政府からは、米豪関係の強化の脅威が小さく見えるようになっている。
豪州が、中国の怒りを掻き立てることなく、軍事アクセスを米国により多く提供できたことは、米国との安全保障上の同盟と、中国との良好な関係をバランスさせるという、困難なアプローチが、うまくいっているように見える。