政府系ファンドには、政治的な目的に利用されるというリスクがあります。日本だけでなく、世界中の政府系ファンドの問題です。しかし、多くの政府系ファンドは、政治介入を受けないよう厳格な運用をしている。GPIFにおいても、政府による政治的な介入を受けないようにすることが、ガバナンス改革において最も必要なことです。政治的な介入をできだけ遮断することが年金運用の成功、リターンの長期的な確保にもつながると思います。
――正しい方法で運用してリターンをあげてゆくことは悪いことではありませんね。
小幡:もちろんです。一方で、運用などしなくてもいい、という考え方もあるのですが、現実には難しいと思います。全額を現金で持ったとしても、インフレリスクがあり、目減りする可能性があり、為替リスクでドルに比べて弱くなり、購買力が低下するかもしれません。全額を国債にしても、国債は値下がりリスクがあり、インフレになれば国債の価格は下落します。金融資産を持っている以上、必ず何らかのリスクがあり、リスクからは逃れられません。そうである以上、運用に前向きに取り組み、リスクコントロールを行って、リスクをとった分のリターンをしっかりとることが必要です。GPIF改革というのは、この運用を行っている組織のガバナンス(統治)をよくして、リターンをできるだけ多くとりましょうということなのです。
――運用するのは大事ですが、慎重に行うことも同じく重要なことだと思います。
小幡:もともと年金の法律にも「安全かつ確実に」と書かれています。「安全」とは、例えば、株式での運用比率をやみくもに増やすことからは遠いですよね。一方で、日本の国債という一つの資産を6割も持っているのはバランスが悪く、むしろ安全ではないという見方もあります。これをどうするかは専門家が議論することであり、そのために政府とは別組織のGPIFをつくり、それに対する社外取締役的な運用委員会を作ったわけです。