2024年12月12日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2014年8月28日

――つまり慎重に運用を行うというのであれば、専門家に任せた方がよいということですか。

小幡:GPIFの運用をより良くしたいという思いから改革を行うことは、すごく良いことですから、大賛成です。ただ、例えば「国債を売って株を買え」といった具合に、個別資産について専門家でない政治家があれこれ言うのは運用に対する介入であり、健全ではないので、排除しないといけないと思います。

――他の国はどうしているのでしょうか。

小幡:例えばノルウエーは自国資産には投資しないことになっています。国内債券にも国内株式にも投資しません。リスク分散という意味でも他の国に投資しています。カナダの年金ファンドは歴史的経緯として自国の国債を保有していますが、株式についてはカナダの株式は保有していません。投資しているのは全部外国の株です。

――今後のGPIFの改革議論にどういったことを期待されますか。

 きっかけはどうであれ、GPIFがこれだけ注目され、国民みんなが知るところになったのは良いことだと思います。しかも改革は必要なことです。絶好の機会ですので、短期的に日本株を買うとか買わないといった議論に終わらせずに、どう運用すべきなのかという国民的な議論を深めて真のGPIFの改革を実現し、よりよい運用を行って、その結果、年金積立金も増えるという動きになってもらいたいと期待しています。


小幡績(おばた・せき)
1967年、千葉県生まれ。92年東京大学卒業、大蔵省(現財務省)入省。99年退職。ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)一橋大学経済研究所専任講師などを経て、2003年より慶應義塾大学ビジネススクール准教授。2014年4月までGPIFの運用委員を務める。主な著書に『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)など多数。

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