「購買部というのは毎週こんなことをやっているのか?」と購買部長に聞いたら、「いや、そんなことはありません。金児さんが担当になったばかりなので」と言う。ともかくその週は夢心地で終わりました。
購買と経理・財務はなじまない
第2週目の月曜日、小田切新太郎会長から呼ばれました。「あなたは経理・財務の担当を長くやってきて、今度法務と購買を担当することになった。法務は法律だからそれでいいとして、購買担当と経理・財務担当はなじまないということを知っていますか」というふうに聞かれたのです。
私は「待てよ、なじまないということは兼務してはいけないということかな」と思いましたが、「おっしゃることはなんとなしにわかるような気がします」、「昔、早稲田大学の日下部與一さんという監査論の先生の本を読んだときに、経理・財務部門と購買部門はなじまない。それをごっちゃにしてはならないというのを読んだのを覚えています」と言ったのです。
そうしたら小田切会長が「ああ、あなたはそういうことを知っていたんですか。あなたが日下部さんの本を読んで勉強していたということに、私は非常に感激しました」とおっしゃる。
「実は経理・財務と購買はなじまないのです。経理・財務部門は会社全体の財産を、たとえ忌み嫌われても、煙たがられても、しっかり守っていくべき部門なのです。ところが、購買部門は、ほかの会社の人が売りに来たものをどんどん買うのですから、お金の面から見ると支払い一辺倒になります。そういうことをやる役員と経理・財務で財産をきっちり守っていく役員とが兼務することは望ましくないことです。それは、理論的にも望ましいことではない。それをあなたが知っていたというのは、ほんとうに驚いた。嬉しい話ですね」と小田切会長は続けました。
それで、「そんなに褒めていただいても、私はただ、日下部さんの本に書いてあったという記憶がちょっとあるだけの話ですけど」と言いましたら、「その記憶が大事なのです」とおっしゃる。そして、「あなたは経理・財務担当でいま忙しいでしょう?」と言うのです。
だから「はい忙しいです」と答えたら、「それでは、購買の担当については、購買部長、購買課長以下の人たちに全部任せて、名前だけ購買担当やって、仕事は何もやらない、接待も全く受けないという線でどうですかね?」とおっしゃるのです。実際、私は経理・財務だけで手一杯でしたから、「会長がおっしゃるようにいたします」と答えました。
そのとき「実は先週、大変な接待を2回も受けてしまいました」とはまったく言えませんでした。
こうやって私は購買の担当を実質的に外されました。そしてその後、「接待」についてのすごい教えを小田切会長から教わることになります<次回に続く>。