2024年4月20日(土)

解体 ロシア外交

2014年9月19日

 何故ならその直後の10日、かねてよりプーチンと懇意にしているという森元首相が訪ロしてプーチンと会談し、安倍首相の親書を手渡したからである。これに対しプーチンはポジティブに反応し、ウクライナ問題で悪化した日露関係に意欲を見せたという。この(安倍首相本人ではなく)森元首相を派遣したことは、米ロ間のジレンマに苛まれている日本政府にとって、双方の顔を立てた措置であるのは間違いない。

 それでも、日本はジレンマのなかで、欧米との協調路線を優先する選択をとった。9月18日に、翌19日に対露追加制裁を発動することが発表されたのだ。追加制裁の内容については、既に発動してきた日本入国査証(ビザ)発給停止や資産凍結の対象者の拡大に加え、日本がこれまで必死で避けてきた、ロシアの聖域である「エネルギーと金融」分野での制裁も検討されているという(9月18日段階)。9月末のアメリカ・ニューヨークで行なわれる国連総会の折に外相会議の設定を試みるという報道もあるが、特に、エネルギー部門にまで制裁が拡大されれば、今秋のプーチン訪日は絶望的だと言って良い。

 しかしその後、追加制裁の発動に関する報道は誤報であったことが分かり、むしろ日ロ関係は安定の方向に向かっている。21日にはプーチン大統領が安倍首相に誕生日を祝う電話をかけてきて、今後も対話の継続で約束し、訪日延期はほぼ確実のようである。11月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)での日露首脳会談実現に向けて調整中だ。

未承認国家になってしまう可能性も

 最後に、曲がりなりにも停戦が合意された現在ですら、ウクライナの今後の展望は決して明るくないことを指摘しておきたい。

 まず、前述のように、停戦が合意されたあとも、局地的な武力衝突が多々発生し、連日死傷者が出ているという現実がある。

 次に、やはり本稿でも述べたように、「停戦」中に戦闘態勢を整え、相手のすきをついて再び攻勢に出るという作戦をウクライナ/アメリカとロシアのどちらか、ないし両方が考えている可能性も否定できない。

 そして、一番厄介なのは、停戦が平和を意味しないということだ。現状では、和平後のウクライナの姿についての政権サイドと東部親露派の主張が全く乖離している。ロシアは東部への影響力を維持したいと考えており、ロシアが主導する関税同盟に東部だけでも入れるような経済的自由や高度な政治的自立性を東部の所謂「ノヴォロシア」に持たせる事を目指している。事実上の国家とも言うべき地位だといえよう。そして親露派もここにきてウクライナ領に残るつもりはないとし、独立を主張している。


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