2024年11月22日(金)

解体 ロシア外交

2014年9月19日

 だが、ポロシェンコ大統領は、「特別な地位」を東部に付与するとし、実際にウクライナ議会は9月16日に東部に3年間の自治を認める内容を含む「特別な地位」を与える法案を可決した。加えて、参戦した親露派兵士の恩赦を与える法案も可決したが、政府サイドにウクライナの連邦制や領土割譲を認めるつもりがないことは明らかだ。議会で可決された法案にしても、「自治」のレベルは今後の争点となるであろうし、何より3年という期限付であることはネックになりそうだ。今後、停戦後の東部の地位について交渉が始められることになっているが、現状では双方が合意に至る結論を導くのは難しいだろう。

 そして、最悪の場合は、他の旧ソ連の未承認国家(国家の体裁を整えつつ、他国からの国家承認を受けていないため、国家とはいえない地域の事。筆者の新刊『未承認国家と覇権なき世界』NHK出版、2014年8月、に詳しい)のようになってしまうだろう。他の旧ソ連の事例、すなわち、アブハジア、南オセチア、ナゴルノ・カラバフ、沿ドニエストルのように、紛争ないし内戦のあと、ロシアの介入で分離主義派が武力的に勝利し、停戦後の地位についての合意が成立しないがためにそのまま紛争は凍結し、分離主義派が占拠する領土は未承認国家として残存する――。地域の不安定要素となってしまう可能性は低くないといえそうだ。

 このように停戦は決して平和を意味しない。軍事的にも、政治的にもしばらくはロシアや米国をバックにしたウクライナ国内外の対立は続きそうである。

街中にはプーチンを風刺するイラストも

*編集部より:5ページ対露追加制裁発表の部分について、現時点での情報を加筆いたしました。(2014/09/22 14:28)

ウクライナ危機の真相 プーチンの思惑
小泉 悠・ 佐々木正明・廣瀬陽子・亀山郁夫・ 佐藤 優・Wedge編集部
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