2024年7月18日(木)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月12日

 だが、知識人たちが主導する運動は、「あくまで香港経済にダメージを与えないように」という配慮のなかで行われ、休日を狙って呼びかけられるというものだった。その分、多くの人々に理解され、中国との間に危険な対立をつくりだすことも避けられるという特徴があった反面、運動の広がりとしては弱さも指摘されていた。

 そんななか全人代常委での改革案の中身が明らかになり、18歳以上のすべての香港人に選挙権が与えられるとなったものの、立候補できるのは中国共産党に極めて近い人々で構成される指名委員会(1200名)の過半数以上の支持を得なければならない(しかも最大3人まで)ことが分かると、これに学生たちが強く反発。一気に街に繰り出して各地で抗議行動を始めるのだったが、その時点ですでに香港経済に支障のないようにとする従来型の“佔中”は消えてゆくことになり、さらに政府側が催涙弾を打ち込むという暴挙に出たことで市民が加わり、一気に10万人という大きなデモへと変わっていったのである。

中国政府へのダメージ

 催涙弾を使い制圧しようとした当初のやり方に加えて、政府側はその後、時間を引き延ばして学生側の勢いを削ぐ方法へと切り替えてゆくのだが、ここには北京のサジェッションが働いていると筆者は考えている。というのも中国大陸では頻発するデモや暴動に対して、勢いのある段階でそれを鎮火しようとはしないからだ。もし上り坂にある運動を妨害すれば、かえって火に油を注ぐことになると彼らはよく知っているからだ。

 反日デモでも一定の段階に達するまで公安は周りを囲んで何もしない。これをもって日本では官制デモとの判断をするのだが、どのデモや暴動に対しても彼らは同じことをするのである。放っておけば目的を失い、飽きて、ばらばらになるとよく知っているのだ。

 その意味で、香港の学生側には極めて辛い状況が続くのだが、この香港の経験が中国にとってダメージの少ないことだったかといえば決してそうではない。

 北京の国務院OBが語る。

 「中華民族の復興を掲げ、欧米的価値観に対する独自の価値観を世界に広げようとしているとき、まさに足もとが揺らいでいるのですから深刻です。また中国の経済力を背景に、もはや人権を外交の柱に据える欧米先進国のスタイルは下火になりつつあった。そんななか、香港が民主化を求めれば黙っていた欧米各国も反応せざるを得ない。一方の中国はこの運動の背後に欧米がいると信じて頑なになり、また中国国内への本格的な波及を恐れて香港に譲歩などできない。何が何でも民主勢力を抑え込むはずです。となれば、これまで相当に自信を深めてきていた台湾統一に向けた動きは、大きく足踏みすることが避けられなくなるでしょうね」

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