2024年7月16日(火)

学びなおしのリスク論

2014年10月14日

 明日の天気はどうか。降水確率はどれくらいか。気温は何度まで下がるか――。

 私たちは日々、これからの天気がどうなるかを気にしつつ暮らしている。傘が必要か、服は厚めのほうがよいか、催しものは予定通り開かれるかと、自分たちの暮らしに影響を及ぼすからだ。

 天気に関する事柄は、だれもが最も身近に感じられるリスクの題材の一つといえるのではないか。そう考えて、気象庁のサイトを覗くと、「気象情報を活用して気候の影響を軽減してみませんか?」というページがある。「気候リスク」という概念を人びとに伝え、気候リスクの情報を企業の経済活動などに活用してもらう取り組みを始めたようだ。

中三川浩氏。気象庁地球環境・海洋部気候情報課所属、気候リスク対策官。気象大学校卒。卒業後は地方気象台や管区気象台等で気象観測や短期予報の業務に従事。平成11年度から気象庁本庁で、世界の天候監視や異常気象の分析、国際的な気候データの流通促進、季節予報業務などを歴任。平成25年度より各種産業において季節予報などの気候情報を利活用する気候リスク管理技術の普及のための取り組みを推進する業務に従事している。

 気候リスクとはどんなもので、どう活用できるというのか。今回は、「気候リスク対策官」という肩書をもつ気象庁の中三川浩氏に聞いてみることにした。

 まず「気候リスク」の定義から。中三川氏は、「天候不順など、平年とは隔たった気候が現れることがありますが、そのような気候によって影響を受ける可能性のことを、気候リスクと呼んでいます」と説明する。

 同じ地域であれば、異常気象などが起きる“可能性”は誰にとっても変わることはない。その一方、異常気象によって受ける“影響”は企業や人それぞれに異なってくる。例えば「今シーズンの冬は寒くなる」という可能性に対して、マフラーメーカーは商品がたくさん売れるだろうからうれしいが、鉄道会社は大雪による交通マヒなどが起きるためうれしくない。

 こうしたことから、気候リスクとは「異常気象などの起こる可能性」と「その影響の大きさ」を掛けあわせたものとして考えることができる。

 「また、リスクというと悪いイメージばかり浮かぶかもしれませんが、『気候リスク』は、悪い影響だけでなく、よい影響を受ける可能性も含めて、そう呼んでいます」


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