学びなおしのリスク論

2014年10月14日

»著者プロフィール
閉じる

漆原次郎 (うるしはら・じろう)

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、科学技術関連の記事を寄稿。早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラム修了。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。著書に『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』『日産驚異の会議』『宇宙飛行士になるには』など。

 この2週間先までの平均気温などの予想は「異常天候早期警戒情報」という情報の基礎資料として提供されている。この情報は、原則、月曜と木曜、5〜14日後までを対象に、7日間平均気温が「かなり高い」もしくは「かなり低い」となる確率が30%以上、または7日間降雪量が「かなり多い」となる確率が30%以上と見込まれる場合に発表される。情報ホームページの「確率密度分布図」には、関東甲信地方といった地域や東京や大阪といった主要な地点ごとの7日間平均気温について、平年と比べて何℃低く(高く)なる確率が何パーセントといった数値を調べることができる。

気象庁サイト内「7日平均気温平年偏差の累積確率・確率密度分布図」のページ。グラフの青い棒を動かして、「19℃以下の確率:44%」「20℃以下の確率76%」といったように、気温ごとの確率を見ることができる。(画像提供:気象庁)
拡大画像表示

“経験と勘”の裏づけや新たな発見も

 こうして気候リスクの情報を分析すれば、自分たちの仕事への悪影響を減らす対策を打ったり、好影響を増やす仕掛けをしたりすることができるかもしれない。仕事に伴うさまざまなリスクを最小の費用で食い止めることを「リスクマネジメント」というが、「悪い気候リスクの影響は和らげて、好ましい気候リスクの影響は伸ばすというのが、気候リスクマネジメントの基本です」と中三川氏は言う。

 これまで各業界の気候に関するリスクマネジメントは、“経験と勘”に基づくものが多かった。さまざまな業界で、「気温が何℃まで下がると何々が売れ始める」といった話がある。その多くは、その業界の人たちの感覚による予想だったようだ。もちろん、それも重要ではあるが、「気象データの裏付けをとって定量的に評価すれば、その話の信頼性が向上します。また、意思決定をする際、誰もが納得できるようになります」と、中三川氏は続ける。

 実際に気象データを定量的に評価する観点から商品の売上の変化を見ると、さきのロングブーツのように“経験と勘”がやはり当たっていたとわかったものもある一方、予想外の結果が出たものもあったという。

 「秋物の肌着は日平均気温が20℃を下回ると売れ始め、冬物は15℃を下回ると売れ始めることが、気象データからわかりました。肌着はこんな気温で売れ始めるのかと、アパレル業界の方たちが驚いていました」

関連記事

新着記事

»もっと見る