キャリアを振り回すアップルも手詰まり
激しい競争を繰り広げる3社だが、これらはすべてアップルの手のひらの上で各社が踊らされている構図でもある。携帯各社は競争で消耗し、市場の不健全さは相も変わらずなくならない。巡り巡ってユーザーには、多様な選択肢が与えられないというしわ寄せも生じている。携帯各社のiPhone偏重販売戦略は、日本の端末メーカーの息の根も止めようとしている。
iPhone6の製品自体や製品を取り巻く環境に目を向けると、実はアップル自体も大きな変化の波に飲み込まれつつあることが分かる。
まず今回の新製品となるiPhone6や6Plusを触れても、製品としての新しさがまるで感じられない。本体や画面サイズが大きくなったものの、使い勝手は1世代、2世代前のiPhone5やiPhone5c/5sと変わらない。数少ない新機能である決済機能「Apple Pay」も、日本では既に「おサイフケータイ」が導入されているため、目新しい点はない。
実際、かつて誰よりも熱くiPhoneの素晴らしさを語っていたソフトバンクの孫正義社長は、今回の新iPhoneについては一言、Twitterにて「今日はiPhone6の発売。画面が大きくなって薄くなって写真も綺麗」と呟いたのみだった。孫社長の態度からは、既にiPhoneに飽きてしまった雰囲気が伝わってくる。
これはアップルの置かれた状況を的確に表している。文字通り、新iPhoneは「画面が大きくなって薄くなって写真も綺麗」になっただけ。アップルも次なるイノベーションに向けては手詰まりの状態なのだ。
日本での人気はこれまでアップルが築き上げてきた「ブランド」と、携帯各社がiPhoneを優遇する販売施策のたまものだろう。製品自体の革新性は、もはや消えている。アップル自身、スマホのコモディティー化の波に飲み込まれてしまっているのだ。