急速にコモディティー化するスマホ
実はスマホ販売シェアでアップルが上位を占めるのは日本と米国くらいだ。欧州ですらシェアは1割程度であり、新興国では100ドル前後のローコストのスマホが市場を席巻している。これらのローコストスマホを作るのが中国メーカーや、新興国の地場メーカーである。
「携帯電話を再定義する」として登場した初代iPhoneから7年。スマホは急速にコモディティー化が進展し、誰でもそれなりの端末を安価に作れるようになってしまったのだ。
アップルをはじめとしたグローバル端末メーカーは、次なるイノベーションを求めて、ウエアラブルデバイス市場になだれ込んでいる。しかしこれまで登場したリストバンド型デバイスや眼鏡型デバイスのどれを見ても、スマホほど市場を席巻する存在になれるとは到底思えない。
一方でスマホは、パソコンから連なるパーソナルコンピューティング端末の歴史の中で、究極的な存在と言えるほど使い勝手や端末形状が洗練されてきている。長い期間、世界の多くの人々が標準的に使うコンピューティング端末となっていく可能性がある。
米グーグルによると現在、世界のスマホユーザーは17億5000万人。グーグルは、残りの世界人口である50億人にスマホを届けようと、「Android One」という低価格なスマホプラットフォームを9月に発表した。スマホの次なるメイン市場は、新興国をはじめとした「次の50億人市場」なのだ。
こうなってくるとスマホは、現在のパソコン以上に、本体の形状や機能に一喜一憂されなくなるだろう。手のひらの中の情報端末として、必要十分の機能があればよい。ユーザーによる端末やメーカーに対するこだわりも薄れていくのではないか。
長い歴史的な視点からモバイル端末を見ると、iモードなどキャリア端末が席巻した10年間、そしてアップルのiPhoneがスマホ革命を起こしたこの7年は、特殊な時代だったのかもしれない。
これから先のモバイル端末市場は、マーケットを席巻するガリバーは現れず、世界中のあちこちで地場メーカーが現れたり消えたりする戦国時代を迎えそうだ。そしてスマホ自体も長い期間をかけて、文房具のように当たり前の存在になっていくのかもしれない。iPhone6の発売からは、このようなスマホの未来が垣間見えることになった。
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