チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年10月23日

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 そのような中で、「親・誠・恵・容外交理念」に対する「学術研究」の気運も高まってきている。たとえば名門大学である復旦大学国際問題研究院の邢麗菊副教授の手によって、「中国の伝統文化」から「親・誠・恵・容外交理念」の「源流」を探ろうとする学術論文が最近になって出てきている。

 このようにして、国際社会ではほとんど注目されていないこの「親・誠・恵・容」の「外交理念」たるものは、中国国内では脚光を浴びて大いに盛り上がっている様子だ。

道徳的・感情的色彩の強い理念?

 それでは、この「親・誠・恵・容の周辺外交理念」とは具体的に一体どういうものなのか。

 これは、2013年10月下旬に中国政府が主催した「周辺外交活動座談会」において、習近平主席が自分の政権の新しい外交理念として自ら提唱したものである。ちなみに胡錦濤政権時代の中国では、「調和のとれた世界」という全体理念の下で「相互尊重・相互信頼」や「互恵互利」などの外交理念が打ち出されたことがあった。今回の独特な表現は、習主席自身が打ち出した彼の外交理念なのである。そして中国官製メディアの総括によれば、それが打ち出されてからの1年間、習主席はまさにこの新しい外交理念に基づいて意欲的な周辺外交を展開して「歴史的な成果」をあげてきたという。

 この「親・誠・恵・容外交理念」の中味は一体何か。前述の座談会における習主席自身の説明と人民日報や新華通信社などによる解釈を総合してみると、概ね下記のようなものである。

 まず、「親」とはすなわち「親しむ」、「親切に接する」という意味である。つまり習主席からすれば、彼の周辺外交の第一の方針はまず、周辺国に親しみ、親切にしてあげる、ということである。

 そして「誠」は言うまでもなく「誠意」、「誠実」の「誠」であって、周辺国には「誠意を持って接する」という意味合いである。

 「恵」は主に経済分野の話であって、中国は周辺国に経済的「恵」を与えることによってその発展と繁栄に貢献する、という意味だ。

 最後の「容」は「寛容」の意味である。要するに、中国は周辺国に対して寛容の態度で臨むべきであり、中国と異なった各国の立場や考え方を「包容」しなければならない、ということである。

 以上が、習主席が自ら提唱し、かつ「実践」しているとされる「親・誠・恵・容の周辺外交理念」の概要であるが、一見すれば分かるように、それは一国の「外交理念」というよりも、むしろ一個人が掲げる道徳的行動基準のようなものに近い。国際政治の世界では国益のための冷徹な打算こそが外交の鉄則であるが、習主席の提唱したこの「親・誠・恵・容の周辺外交理念」は、それとは相容れない道徳的・感情的色彩の強いもののように見える。それは一国の「外交理念」にしては実に異質で奇妙なものであり、その真意は一体どこにあるのかがむしろ疑わしくさえ感じる。

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