2024年4月19日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年11月14日

 自由シリア軍内の無秩序は、資金提供してきた外部の勢力の混乱を反映している。彼らが真に協力し、単一の反乱軍に資金と武器を集中させるまでは、シリアの混乱は続くであろう、と述べています。

(出典:David Ignatius ‘Foreign nations’ proxy war in Syria creates chaos’(WP, Oct.2,2014))
http://www.washingtonpost.com/opinions/david-ignatius-foreign-nations-proxy-war-creates-syrian-chaos/2014/10/02/061fb50c-4a7a-11e4-a046-120a8a855cca_story.html

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 イグネイシャスは、インテリジェンス関係者の動きを良く把握しています。この記事も、現地でアラブ人諜報員などに取材して、得られた話に基づいて書かれたものであり、彼の卓越した取材能力の産物と言ってよいでしょう。

 自由シリア軍が内部分裂し、それを支援する米国、トルコ、サウジ、ヨルダン、カタールが、それぞれ勝手に支援すべきグループを決めて支援したことが混乱に拍車をかけた、という指摘は、確かにその通りでしょう。実際、多くの人が、カタールは、アサドを倒すため、過激派への支援も辞さなかった、と言っています。

 「ISを弱体化させ殲滅する」ためのイラク・シリア空爆には、米国の指導下、アラブ諸国としてはサウジ、カタール、ヨルダン、UAEなどが「有志連合」を組んでいますが、この有志連合がまとまって、反乱軍支援の調整をするのが良いように思います。単一の反乱軍への支援に合意出来ればベストですが、その合意ができずとも、調整ができるだけでも価値があるでしょう。

 他方、穏健派シリア反乱軍の育成失敗については、各国の情報機関のばらばらな支援が主たる原因かと言うと、一因ではありますが、主たる原因ではないのではないかと思います。

 穏健派反乱軍の統制がとれない背景には、米国のオバマ大統領が反乱軍支援に熱心ではなく、各国の支援を調整する指導力を発揮しなかったこと、ちょうどフランス革命でジャコバン派が猛威を振るったように、革命状況では穏健派より狂信的な勢力が強くなりがちであること、さらに、穏健派自身に派閥抗争など多くの問題があったことがあります。

 シリアからの難民は、今や、全国民の3分の1以上になっています。この一部を訓練し、自由シリア軍に組み入れ、武器供与もすれば、自由シリア軍をある程度大きく強くすることは、不可能ではないようにも思われます。

  
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