第4に、コミュニケは、「法治」が共産党の権威を低下させないことを、明確にした。「共産党のリーダーシップへの固執は、社会主義的法治の基本的前提条件である。共産党のリーダーシップと社会主義的法治は、同義である」と言っている。コミュニケは、「中国の憲法は中国共産党の指導的地位を確立するものである」とも指摘している。つまり、共産党は、法と憲法の上に位置し続けるということである。「法治」は、依然として、北京の権威を主張するためのメカニズムであり、共産党の権力を制限する手段ではない。
出典:Shannon Tiezzi,‘4 Things We Learned from China’s 4th Plenum’(The Diplomat, October 23,2014)
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ティエッツィは、中国政府、共産党、政府系マスコミの公式発表や報道を丹念に追うことを得意とする中国分析の専門家です。この記事でも、そうした手法により、4中全会で集中的にとり上げられた「法治(rule of law)」が共産党による支配強化を意味することを、的確に指摘しています。
共産党独裁体制下の中国において、「法治」という時、それは、民主主義国家における三権分立している司法権による「法治」ではありません。中国においては、共産党は立法、司法、行政の上に立ち、「法治」とはその枠内における法の支配に過ぎません。4中全会のコミュニケも、「法治」が共産党の権威を低下させることはない、と明言しています。
地方当局者の司法手続きへの干渉排除は、地方の指導者が「人治」により地方の裁判所に干渉する権限を弱め、ひいては地方当局の統制を弱め、中央集権化を進める効果を期待しているのでしょう。また、説明責任と透明化の推進は、「党と人民の結びつき方を変える」ということですから、習近平好みのポピュリズムを表しているように思います。
現在は小康状態であるようにも見えますが、汚職腐敗撲滅のため「虎も蠅も叩く」という政策を進める上で、「法治」が如何なる意味をもつかについても、注視していく必要があります。場合によっては、「法治」は単に政敵を攻撃するための一つの手段として使われるだけに終わるかもしれません。
ティエッツイの論評には触れられていませんが、4中全会のコミュニケには、香港情勢に対する言及があり、香港に対しても、「法治」によって対処する構えを示したものと解することが可能です。ここにいう「法治」による支配とは、「動乱」のような事態に対しては厳罰を以て対処する、という決意の表明を意味します。今後の事態の展開如何によっては、香港から本土に民主化の影響が波及しないよう、より強圧的手段がとられることもあり得るでしょう。
今回の4中全会のコミュニケには、目下政治的懸案となっている政治局常務委員・周永康の処置について一切の言及がない点が、奇異な印象を与えました。江沢民、胡錦濤らが公の場に同時に登場したことから見ても、周の扱いを巡り、いまだ党内の結論が出ていないことを伺わせ、習近平体制の政権基盤がいまだ安定という段階には至っていないものと考えられます。
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