新ガイドラインが完成するのを待つ必要があるが、いずれにせよ、米日同盟、日本の防衛政策には、革命的ではなく漸進的な変化があると考えるのが賢明である、と述べています。
出典:Benjamin Schreer,‘Japan and America: Forging a Global Alliance?’(The National Interest, October 23,2014)
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/japan-america-forging-global-alliance-11539
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日米ガイドライン改定に対する論評は、まだ中間報告の段階なのであまり目にしませんが、この論説は、そういう中で、日米ガイドライン改定について、地域にはどういう見方があるのかを知る、手掛かりになるでしょう。
シュリアは、日米同盟が、地域および世界においてより大きな役割を果たすことに期待を示しながらも、自衛権についての新3要件などから、それは難しいのではないか、と言っています。シュリアの観察は、その通りでしょう。論説は、地域における日本の安全保障上の役割強化について、地域の国々の一部にある、日本への過剰期待を戒める意義もあるでしょう。
今回の集団的自衛権の限定行使容認の閣議決定は、憲法解釈の基本は変えず、特別な事態への「当てはめ」を述べたものに過ぎません。内閣法制局が従来の憲法解釈の基本を守り切ったのであり、根本的な変化ではありません。集団的自衛権の限定行使容認について、賛成派は過大評価する傾向にあり、拒絶派に至っては大騒ぎし過ぎです。もちろん、日本を守っている米艦が攻撃された際に、傍にいる自衛艦が守れないなどという非常識なことがなくなりましたので、歓迎すべきことには違いありません。しかし、集団的自衛権の限定行使容認の3要件には、日本の存立が明白に脅かされる危険がある場合ということが含まれていますので、新ガイドラインが日米同盟の真のグローバル化につながる可能性は低いと言ってよいでしょう。
そもそも、自衛権というのは国際法上の観念です。しかし、日本は憲法9条を理由に、自衛権について、依然として、国際的常識から外れた解釈をしています。それを政策面で端的に示しているのが専守防衛です。今後の課題としては、この自衛権解釈を国際基準に即したものにすること、本当の集団的自衛権を行使できる国になり、攻守同盟を結べる国にすることを目指すべきでしょう。今の日本は、特殊な歴史的背景で成立した日米同盟以外には攻守同盟を結ぶことができず、その結果、あたかも「非同盟主義」をとっている国のようになってしまっています。ただ、それを改めるのは長期的な取り組みにならざるを得ませんから、その間、無為に過ごすべきでないことは言うまでもなく、日本は、厳しい制約がある中で、最大限、日米同盟を深化させ、また、攻守同盟を結べなくとも、地域の利害を同じくする国々との間で、武器や技術の輸出、共同演習などを通じて、安全保障協力を強力に進展させていかなければなりません。
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