2024年4月20日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月29日

 フィナンシャル・タイムズ紙は、日本の集団的自衛権行使につき、日本が集団的自衛権を持ち、より普通の防衛態勢を目指す権利を否定することはできないが、それを歓迎すべきと言うことではない、とのピリング(同紙コラムニスト)の論説を7月2日付で掲載しています。

 すなわち、日本の内閣は、同盟国を防衛する権利を宣言することで、戦争放棄の憲法を引き裂いた。それにより、日本は、他の、同様の権利を維持する、おそらく戦争を喜ぶ国に仲間入りをした。

 実際のところ、ほぼ全ての国が、集団的自衛権を保持し続けている。日本と同様に、第二次大戦で誤った側に付いたドイツは、1955年にNATOに加盟して以来、同盟国防衛の義務を負っている。

 我々は、安倍総理のナショナリスティックな言辞を嫌悪するかもしれないが、日本が行ったことは、「普通の国」に向かって僅かに近づいたに過ぎないことを、認識すべきである。

 ここで、いくつかの疑問がわいてくる。第一に、我々は、日本がより普通の防衛態勢をとることを懸念すべきかどうかである。結局のところ、ドイツは、アフガンのような紛争に参加している。徴兵制さえ持っている。他国に認められている権利を日本は否定されるべきである、と言うことは、日本が、信頼できないか、悔恨が足りない、ということを意味する。それは、確かに、中韓の多くの人の見方である。東京は、何度も謝罪してきたが、真剣さについては議論がある。しかし、日本は、戦後の行動の記録によっても、判断されるべきである。東京は1945年以来、ただの1度も、紛争に巻き込まれていない。

 第二に、安倍氏は適切な手続きを迂回したかどうかである。ドナルド・キーンは、憲法9条は「日本の栄光」だと言っている。安倍氏は、憲法改正ではなく、再解釈をすることにより、勝てそうもない国民投票を回避した。

 確かに、このたびの大きな変化については、大衆の議論が欠落していた。憲法再解釈への抗議デモで、男が自らに火をつけたことが、ニュースとして価値があると、日本のほとんどのメディアに看做されなかったことは、心配すべきである。中国のメディアが同様に選択的態度をとった時は、我々は、国家による検閲だと言う。

 第三の疑問は、新しく手に入れた行動の自由により安倍氏が何をすることを意図しているかである。関係するのは、近隣国、特に中国がどう反応するかである。日本が次の米の軍事的冒険に巻き込まれると考える日本人がいるが、ワシントンでは、その逆に、米が東シナ海での日中の領域紛争に巻き込まれることへの懸念が高まっている。


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