――かつてソフトバンクの孫正義会長が同じような発言をなさっていました。倒産寸前だったボーダフォンジャパンを買収して業界3位のキャリアになり、まずやらなければいけないことは、1カ月でもいいから社員に純増契約数1位を経験させることだった、と。
熊谷:よくわかりますね。上昇する可能性のない業界3位から革命児に変わっていくきっかけは、純増1位の経験だったのでしょう。
千葉市としてICTに力を入れているのも、私がICT業界出身だということも多少はありますが、投資回収できる分野だと判断しているからなんです。少ない投資でいけると判断できる分野だったので、あえて戦う場所にしたということです。
ハラールとはインフラである
――昨年、「千葉市でハラール認証(※イスラム法において合法な食事であることを証明する認証制度)を広める」という構想について市長が言及されて、それがひとり歩きし、全国紙で「千葉市にイスラム街を作る」といった誤解含みの報道がされたことまでありました。誤報はともかくとしてハラールの普及も着実に進まれているそうですが、この発想はどこから来たのでしょうか?
熊谷:私も千葉市の経済部も「ハラールというものがあるらしい」と気づいたのは、幕張のホテルがハラール認証を取得したという情報がきっかけでした。ハラールってなんだ? と調べてみると、ハラールはムスリムの方々にとっては水道から水が出るのと同じで必須なインフラなんだとわかり、「そりゃあそうだよね」と納得したんです。
千葉市は成田空港に最も近い政令指定都市であり、羽田空港へのアクセスもよく、都心までも40kmという恵まれたポジションにあります。2020年の東京オリンピック開催を控えて、とくに国際競争力のある企業の本社や幕張メッセを有する幕張新都心にとっては、とても重要な戦略になると思いました。
インバウンド戦略により交流人口を増やすことの重要性はどの自治体でも認識されていることですが、現実的にはアジアの方々にどうやって来てもらえるかが鍵になります。そんなことは誰でもわかりますが、皆が同じ方向を見ているなかで突き抜けるための戦略は何かと、我々も頭を悩ませていました。
ご存知の通り、アジアのムスリム人口は大変に大きいわけで、ハラールを都市基盤として整備することは、インバウンド戦略における大きなアドバンテージになるはずです。市政だけでなく民間にも呼びかけていけば、千葉市全体の戦略としてどんどん展開していけるだろうと考えました。