何気なくサインしてしまうことも多い同意書は、ヤフーの場合、プライバシーポリシーと入れ子になって非常に分かりづらい作り。遺伝子検査結果を含む個人情報がどこまで第三者提供されるのかは、一読後も不透明だ。
自社のラボを構えたDeNAライフサイエンスはどうか。社長の深澤優壽氏は「将来はもっと医療に寄りたい」と答えた。DeNAの「遺伝子検査申し込み付属説明書」には、東大と実施する「ヘルスビッグデータを用いた研究」に対する同意欄が用意され、「今のところほとんどのお客様に同意していただけている」。また、深澤氏も将来的には集めた検体を使った「フルゲノム解析」の実施を考えているという。
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いったい、フルゲノム解析とは何か?─。DNAには全部で約30億塩基もの遺伝情報があるが、現在、東大ではそのうち75万塩基の、ジーンクエストでは30万塩基のSNPを見ているに過ぎない。全体が30億あることを考えれば、どちらも五十歩百歩の微々たるもの。フルゲノム解析とはこの30億塩基全部を読む、という意味だ。
ちなみに、個人向け遺伝子検査に入った約300項目を調べるために必要なSNP数は約4000。利用者の遺伝子は、検体を提出した時点で必要箇所以上の解析をされている。
「フルゲノムを出し、“その人たちがどうなるかを追っていく”メガコホートをやって、初めて総体としての人間の遺伝的背景が出てくる。それを、何十年かけて探していこうというスタートラインにいまやっと立ったところ」(前出の高田氏)
それでは、そのメガゲノムコホートを可能にする、ひとつひとつの遺伝情報の所有者は誰なのだろうか?
「もちろん利用者のもの」(東大医科研教授の宮野悟氏)
「検体はDeNAが管理し、遺伝情報は匿名化して東大と共有していく。ただし、お客様にはお約束した300項目以外の情報はお伝えすることはできません」(深澤氏)
「遺伝子占い」やりたさに渡してしまった「究極の個人情報」─自分では見ることのできない遺伝情報を、他人が見ているという薄気味悪さ。機密が守られず不利益をこうむったり悪用されたりすることはないのか、という不安感。気になるのは、この「フルゲノム情報」なるものの使い道だ。