2024年7月20日(土)

Wedge REPORT

2014年12月16日

フルゲノムデータ解析の「その後」

 ビッグデータの質を決めるのは、第一にその大きさ。利用者が多く、数が集まるほどビッグデータとしての価値は上がる。東大がDeNAと、ジーンクエストがヤフーと組んだのも、数を集めパイを取ることが目的だ。今後は合従連衡も当然ありうる。

 一方、個人向け遺伝子検査で集まるデータの最大の問題点は、疾患の発症や死亡など、実際のイベントをきちんと追えないこと。ヤフーはライフログと連結させて医療費削減につなげると言うが、遺伝子データが連結され、最初に科学的な意味を持つのは疾患イベント情報を含む臨床データ。現在のところ遺伝子検査は予防への有用性に乏しいが、健診や人間ドックがふたつをつなぐ鍵となりうるかもしれない。

 フルゲノム解析が一般的になれば、いずれ「ビジネスと医療」の垣根を取り外されなければならない時が来るだろう。「国がルールを作り、データが連結可能となるよう管理すべき」との声もある。しかし、他にも重要な医療問題が山積する我が国において、成果に乏しい遺伝子分野に公費を投入する余力は本当にあるのだろうか。

 研究費が出ない遺伝子分野で挙句の果てに起きたのは「東北メディカル・メガバンク計画」。内容はいくら科学的でも、被災地の検診で血液を集め、復興予算を使って遺伝子解析していると批判を浴びている。たとえエビデンスに乏しくとも、ひとりでも多くの人が自腹を切り、遺伝子検査を利用することで検体や遺伝子データが蓄積し、競争の末にコストが下がり、フルゲノム解析が可能になるという流れは本当に止めるべきなのか。データが蓄積されエビデンスが得られたとき、それはヘルスケアビジネスの枠を離れ、医療の領域に入っていく。個人向け遺伝子検査が医学に忍び寄る中、遺伝子ビジネスが遺伝子医療という聖域に立ち入る日はそう遠くないかもしれない。

◆Wedge2014年10月号より









 

  


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