2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月19日

 もし、中国が他国に既存システムか、新秩序かを選択するように要請すれば、アジアでの新冷戦の条件を作り出しかねない。それはアジアでの平和、繁栄を可能にしてきた現在の国際秩序を掘り崩すことになろう、と述べています。

出典:Fareed Zakaria ‘China’s growing clout’(Washington Post, November 13, 2014)
http://www.washingtonpost.com/opinions/fareed-zakaria-chinas-growing-clout/2014/11/13/fe0481f6-6b74-11e4-a31c-77759fc1eacc_story.html

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 この論説は、中国の最近の行動が、米国の作った戦後秩序に対する挑戦であると指摘しています。大筋で正しい観察であると思われます。IMFに代わる国際金融機関、アジア・インフラ投資銀行の設立、アジア人によるアジア安全保障の提唱などは明らかにそうです。

 安全保障関係については、中国の軍備増強、海洋進出に対抗し、抑止力等を強めることが重要で、中国が開く国際会議を特に気にすることはありません。

 アジア・インフラ投資銀行については、アジアのインフラ整備は必要で、中国が見返りなしに援助をするのならいいと思います。しかし中国は、IMF、世銀、アジア開発銀行の活動と競合しようとしていて、そうなれば、例えばIMFの融資条件を無意味にします。各機関での投票権付与で、中国の経済力に見合わない投票権しか認めてこなかった既得権を守ろうとした欧米の対応にも問題はあります。しかし、既存システムと中国が作ろうとするシステムが両立し得るかどうかを含め、中国のこういう動きには慎重に対応すべきでしょう。

 ある機関が出来る時に、外部にとどまるか、中からその活動に影響を与えるかを考え、決断する必要がありますが、このアジア・インフラ投資銀行は、中国主導で、他の加盟国の投票権は決定的ではなくなるでしょうから、出資のみして、影響力なしということにもなりかねません。中国の提案の背後にある意図をきちんと考える必要があります。

 中国は、世界を階層的に捉え、そのトップにいたいと考えていることは中国の言説に垣間見えますが、これは米国主導秩序の改革などより大きな話です。

 中国共産党、習近平が何をしようとしているのかは、よくわかりません。中国は、かつてのソ連のように共産主義を広めようとしているわけでもありませんし、民族主義で中国を豊かにかつ強くするという単純な目標を追求しているように思われます。ただ、中国は多民族国家で、漢民族主義だけでは諸問題が出てくるでしょう。

 なお、世銀は購買力平価で中国GDPは日本の4倍としていますが、購買力平価による評価はそれが実力と単純に考えない方が良いでしょう。

  
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