2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月5日

 海洋能力の強化には、資金、人、政府の関心が必要である。その点、白塗り船舶の増強は議論をあまり呼ばず、能力増強を安く早くできる。米国は、中国のサラミ戦術への対抗に強い関心を持つ。その最前線にいる小さな近隣諸国は支援を必要とし、米国は支援し得る立場にある。そうすることが紛争予防、安定に資する、と論説は述べています。

出典:Robert Haddick ‘Six Ways to Resist China's Salami-Slicing’(National Interest, November 24, 2014)
http://nationalinterest.org/feature/six-ways-resist-chinas-salami-slicing-tactics-11723?page=show

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 中国の東・南シナ海での海洋進出のやり方をサラミ戦術と形容していますが、的確な形容でしょう。中国は、抵抗の強弱を見極めつつ、小さな措置を積み重ね、辛抱強く地歩を築いてきています。ベトナムのEEZ(排他的経済水域)での石油掘削装置は、ベトナムの反発が強かったので一時撤去しましたが、また出してくるでしょう。また、中国は、中越間で争いのある永暑島(ファイアリークロス環礁)を埋め立てて滑走路を作っていますが、米国の抗議にかかわらず、正当な行為と言い張っています。

 こういうことにどう対応していくのかは、困難な問題です。

 ハディックは、具体的な提言(「白塗り」船舶の増強、関係国での協力強化など)をしていますが、適切な対応策を考えて行く上で、参考になります。

 日中間には、尖閣諸島について危機管理メカニズムを作る合意がありますが、このメカニズムに加え、採るべき措置はあります。

 日本も、海上保安庁の船舶を増強したり、人員の増加を図ったりすることが急務です。紛争時のエスカレーションの各段階に対応できるようにしておくことは、危機が急に軍同士の対決になってしまうことを避けるのに役立ちます。

 「白塗り船舶」増強か、海軍力の増強かについては、取りあえず白塗り船舶を重視すべきであるというのは、軍備拡張競争を激しくしないなどメリットがありますが、軍艦艇整備では到底中国にかなわないからということでは良くありません。出来る範囲内で海軍増強にも努力すべきでしょう。

 中国の隣国同士の協力については、できるだけ進めるということで良いでしょう。中国は、各国撃破戦術で、南シナ海での問題の解決は二国間で行えばよいと言っています。多国間での対応は、それへの対抗にもなります。

 中国のサラミ戦術に対しては、何らかの具体的な諸措置を講じて対応していくのが良いでしょう。手をこまねいて何もしないでいることは、最も好ましくありません。

  
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