考えてみれば、この「100年に一度の経済危機」(グリーンスパン氏の言葉で、しらじらしいと思います)で、日本はもとより世界中の経済学や経済学者が全く役に立たないことが立証されました。経済学者や政治家といった、「権威」が失墜した時代では、一人ひとりの庶民が、「メディアの意見に流されずに、庶民感覚で、シンプルに考えることが大切である」と思います。そして、所属する組織や立場、しがらみや権力で考えず、正直になって、自分の意思で自由に考え、発信し、投票行動に結びつけることが必要です。
庶民のシンプルな考えを見せつけよう
まずは、「郵政民営化は国全体を揺るがすような大事なことでは決してなかった」、という反省の上に、「では、いまの日本国民と国家にとって何が大切かを一人ひとりが思い、政治家の言っていることを、冷静な目で、自分の頭でシンプルに考えてみる」ことが必要です。
たとえば、「官僚政治の打破」と躍起になって公務員をたたいているのをみれば、たしかに天下りなどひどいこともあるけど、「公務員のすべてがダメなわけじゃないだろう、中には志のある立派な公務員もいるはずである」と常識的に、シンプルに考える。そういう庶民の常識視線で政治家やメディアを見つめなおして、ともかく投票所に必ず足を運びましょう。
こんなに政治家が弱くなった時代だからこそ、政治家がぶったまげるほど、投票率を上げたらいいと思うのです。どうしても投票する相手がなければ、かりに白票でもいい。ものすごい投票率で、庶民の「民主主義パワー」を政治家に見せつけるのが大事です。
そして、どこが勝ったとしても、国民の多数が、その政党のすべての政策を全面的に評価したわけではありません。これも郵政選挙の反省ですが、だいたい、選挙に勝った方が、完全な正義であるというような傲慢はおかしいと思います。でも、政治家は勝つと必ず驕ります。また「ペコペコ哲学」を忘れてふんぞり返ってしまうかもしれません。ですから、今回一瞬の総選挙でどこが勝ったにしても、その勝利者を全面的に評価しているわけじゃないよ、威張ってばかりいたら次は落選してもらうよ、という姿勢を、国民が選挙後も示し続けていくことが必要だと思います。
繰り返しになりますが、ここまで政治家の権威が落ち、相対的に庶民の力が強まったのは、私が73年人間をやってきて、初めてのことです。いま2009年の8月に、わが日本は、ほんとうの民主主義の時代の入り口にあると思います。だからこそ、政治家全員が腰を抜かすような投票率を、ぜひ見せつけてやりましょう。
これも繰り返しになりますが、私は、国家と庶民のことを考える、立派な政治家が出てくれれば、心からペコペコし、尊敬したいと思います。そして、そういう政治家が今回の選挙で出てきてくれることを、心から願っています。
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。