ZEVの比率を一定以上達成できなかった自動車メーカーは、米国カリフォルニア州大気資源局(CARB)に罰金を支払うか、または他社が持つ「クレジット」を購入しなければならない。クレジットは、一定比率を超過して達成したメーカーが持つ「排出枠」を指す。
このZEV規制において18年モデル以降、これまでZEVに含めていたハイブリッド車が含まれないことになる。日産自動車の「LEAF」のように主力となるEVを持たず、クレジットを獲得できるのがプラグインハイブリッドのみとなるトヨタは、14年12月6日付日本経済新聞にもある通り、規制の強化をにらんで、規制の枠内であるFCVの発売を行う。
2つめの危機は、自動車業界における“新参者”の台頭だ。現在、米電気自動車メーカーのテスラモーターズなど、既存の自動車メーカーではない“新参者”が、長らく自動車メーカーの庭であった北米市場で存在感を放っている。すり合わせ技術の最高峰であり、鉄板1つ成形することもこだわってきた既存の自動車メーカーは、突如現れた“新参者”に驚きを隠せない。
そうした新たな脅威にトヨタはいち早く対抗策を打ったと言える。電子・電気工学の結晶ともいえるFCV技術は、自動車産業への“新参者”の参入を阻む大きな壁になることができるからだ。家庭用燃料電池(エネファーム)の普及に向けて、資源エネルギー庁で燃料電池推進室長として指揮をとった経験のある、経済産業省の安藤晴彦通商交渉官も、テスラが製造しているEVに使用する蓄電池技術も容易に参入できるものではないことを断ったうえで「確かにテスラモーターズの脅威はあるし、EVに比べFCVの参入障壁が高いことは事実だ」と語る。
「トヨタの本気」は、他の企業の背中を押した。「鶏が先か卵が先か」─インフラが先か燃料電池車の普及が先かという、延々と続けられてきた水かけ論を終わらせたといえる。