市街地を自動運転の車が疾走する日。それは、電機産業のように、ものづくりが競争力を失うことを意味するのか。日本のお家芸、自動車産業に訪れるIT拡大の影響とは。
鍵は「地図情報」と「クラウド」
自動車がIoTとなる未来 覇権を握るのは誰か
ITが自動車産業を支配する日。そんな未来は来るのだろうか。
「完全自動運転」、つまり、市街地を含めた自動運転を実現するために、これから必要となる技術は主に2つ存在する。1つは、標識や信号の位置等まで入力された高度な地図情報であり、もう1つは、周辺環境を認識し、自車がとるべき行動を判断、実行するための、計算能力である。
「地図」と聞いて、真っ先に思い浮かべる企業、それは米グーグルだ。グーグルは2009年から自動運転技術の開発をはじめ、今年5月には、設計から製作まで、自社で行った自動運転車を発表した。彼らの強みは、独自に試作車を開発することのできる技術・資金力、そして、全世界で「Google Car」を走行させて、収集している地図データにある。
米ジョージア州にあるグーグルのデータセンター
(CAMERA PRESS/AFLO)
(CAMERA PRESS/AFLO)
電気通信大学で自動車等の電子制御を研究する新誠一教授も、「グーグルの地図が無ければ自動車が走らない日が来るかもしれないと、誰よりも驚いたのは自動車会社だった」と語る。
グーグル自身は取材に対し、「自動運転車は試験段階で、個別取材は受けない」と口を閉ざしている。グーグルは、米国防総省高等研究計画局(DARPA)主催の自動運転車レースで優勝した、米カーネギーメロン大学や米スタンフォード大学の開発者を自社の自動運転車の開発チームに迎えている。グーグルの狙いが、「地図」を自動車各社に販売するだけであるとは到底思えない。