Wedge REPORT

2015年1月29日

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 しかし、化石燃料である褐炭を水素に改質する際には、結局CO2が発生してしまう。発生するCO2について川崎重工の西村元彦水素プロジェクト部長は「CCS(二酸化炭素回収・貯留技術)にてCO2フリーにする」と話す。しかしCCSは、CO2の注入技術は確立しているものの、CO2が漏れ出していないかを継続して監視する方法や主体、費用等の課題も残っている。

 千代田化工建設は独自技術「SPERA水素」で名乗りを上げる。「SPERA水素」の特徴は、水素をトルエンに固定し、メチルシクロヘキサンという液体に変えて常温常圧で水素を輸送できることだ。つまり、現状のガソリン等に用いているエネルギーインフラをそのまま活用できるという強みがある。

 従前の技術では輸送した後、固定した水素を再び分離させるのが難しかったのだが、千代田化工建設は分離に有効な触媒の開発に成功した。分離には約400℃の熱を用いる必要があることが弱みであるが、追加のエネルギーを使用しないためにも、元々余剰エネルギーを持つ発電所とセットにした使用が見込まれる。

 水素は、石油や石炭のように自然界にすぐに使える形で存在しない。その調達は、結局、資源国の化石燃料に頼らざるを得ないのだ。

 電機業界が沈んだ今、日本の製造業の未来は、自動車産業にかかっている。部品点数が大幅に減るEVでは、日本が強みとするすり合わせ型ものづくりは維持できない。FCVへの期待感は高まるが、世界はついてくるだろうか。

 世界の主流は化石燃料であり、消費者にとって「水素は化石燃料より安い」などの明確なメリットがなければ普及は難しい。しかし現状のFCVや水素価格には、化石燃料を中心とした社会に優る明確なメリットは見つけられない。エネルギーを使う消費者や企業が、半ば強制的に水素を使用する状況にならなければ普及は難しいといえる。

 前出の日原氏も「CO2排出量が規制されるなど、強制力が働かない限りは、FCVや水素インフラの普及について、現状ではなんとも言えない」と苦しい表情を覗かせる。

 水素に取り組む企業の関係者は、大義は「エネルギー安全保障」と口を揃える。電気やガソリンに依存する二次エネルギー構造や、中東依存度の高い石油資源からの多様化を図るというものだが、既にある送配電網やガソリン供給網に代わる、水素供給ネットワークを構築するには巨額の資金が要る。製造、運搬、貯蔵、利活用すべての局面で、コストを下げる技術革新が必要だ。道のりは長い。 

  
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◆Wedge2015年1月号より

 

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