FCVの燃料となる水素を供給する水素ステーションの整備については、JX日鉱日石エネルギー、岩谷産業などのエネルギー事業者10社が、15年度内に水素ステーションを国内に100カ所整備することを発表している。現在設置を予定している水素ステーションは42カ所(14年12月1日現在、次世代自動車振興センター補助金交付決定数)であるが、4大都市圏を中心にFCV利用者が15分~20分で“給油”できるよう整備が進んでいる。
水素自体の販売価格については14年1月14日、岩谷産業が自社商用水素ステーションでの販売価格を1100円/kg(100円/N㎥)とすると発表した。これは「(FCVと)同車格のハイブリッド車の燃料代と同等となる水素価格」だという。トヨタも岩谷産業も、コスト積み上げではない、赤字前提の価格設定で消費者に働きかけている。
しかし、仮に車とステーションが整ったとしても、簡単には成立しないがのが水素社会だ。ネックになるのは水素の調達である。この上流を手掛ける代表的企業は川崎重工業と千代田化工建設だ。
水素調達=結局輸入
川崎重工業は培ってきた技術を用いて水素サプライチェーンの構築を提案している。オーストラリア南端にあるラトロブバレー地区で産出する褐炭をプラントにて水素に改質し、マイナス253℃まで冷却することで液化して貯蔵、その後、液化水素運搬船にて日本に輸送してくるというものだ。
褐炭は石炭の一種だが、これまでは水分量が多いことによる輸送効率の悪さ、自然発火性が高いことによる貯蔵・輸送の難しさから、産出国は採掘した現場で火力発電等に使用するしかなかった。川崎重工は一連のサプライチェーン構築に対し、自社のプラント技術や液化水素運搬船を売り込みたい考えである。