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2015年1月28日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター特任助教

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)。『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

拘置所の過密化を解決するため、FSINでは拘置所の増設を計画している。ヴェジニャーピン氏によると、2016年までに収監者1万3500人分の新スペースの建設が計画されているという。

しかし、政府の計画によると、2020年までに連邦特定目的プログラム「刑執行システム(UIS)の発展」に関する予算は現在よりも削減される。(中略)2007年に内閣が承認したこの国家計画によると、新たな拘置所と既存の流刑地及び拘置所200カ所以上を国際的な基準に基づいて新設及び近代化するとしている。この連邦特定目的プログラムを実現するため、政府は765億ルーブルを支出する筈だった。しかし、修正された計画によると、FSINの施設新設及び近代化費用は180億ルーブル削減される。

公表された文書によると、予算削減によって「250のプログラムと208の新施設建設を期限内に達成することが不可能になる」という。この結果、国際的な基準に合致した拘置所の割合は現在の7.9%から7.2%に低下する見込みだ。クリミアに新しい拘置所を建設するかどうかは明らかでないが、FSINはこれを否定しておらず、政府は366人分を増加させるとしている。(後略)

財政難で囚人たちに労働を課す

 財政危機が思わぬところで影響を及ぼしている一例と言えよう。

 さらにFSINは、財政難に対処するために、新たな取り組みを始めた。刑務所内で囚人に労働を課し、刑務所の運営費用や囚人の犯した犯罪に対する賠償金支払いに充てようというものだ。

 コズロフ記者の別の記事によると、このような制度は以前から存在していたが、多くの刑務所では労働が行われておらず、囚人達はただ収監されている状態であるという。

 ソ連時代に政治犯等を収容していた強制収容所グラーグでは金山やウラン鉱山といった危険な場所で強制労働を課していたが、これらの大部分は1960年代のフルシチョフ政権下で閉鎖された(ただし、ペルミ-3などいくつかのグラーグは1980年代まで残っていた)。これに対して、現在では中国からの安い産品に押され、たとえ囚人を安く使っても価格競争力が維持できないという。また、北極圏の刑務所など気候が厳しい場所では輸送コストが跳ね上がり、この点も価格競争力に悪影響を与えるし、あまりに価格をダンピングしてしまうと民業圧迫となる。

 それでも一部の刑務所では囚人労働が行われ、軍服、マンホールなどの生産や、鉱山での労働等によって年間320億ルーブルほどの収入にはなっていたという。

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