メディアから読むロシア

2015年1月28日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所特別研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

長時間、深夜まで……劣悪な労働環境

 FSINの取り組みはこれをさらに拡大しようというもので、同庁傘下に刑務所内で生産された製品を販売する専門の国営企業を設置し、仲介業者を排除することで価格競争力を高めるとともに、販売先の業者選定や価格交渉等を一括して行うという。さらに囚人達を労働力の必要な企業で働かせることで、刑務所の過密問題や人権問題を雇用元の企業に「アウトソーシング」してしまう狙いもあるようだ。

 だが、刑務所労働をよりビジネスのベースで動かすとなれば、懸念されるのが労働環境の悪化だ。前述したプッシーライオットのメンバー、トロコンニコワ(現在は釈放済み)の告発によると、刑務所内での労働は16-17時間に及ぶ長時間労働や深夜労働など、劣悪な条件が目立ち、睡眠時間が4時間あればいいほうだという。

 こうした状況はFSINも認識しており、前述の国営企業設立案を提唱したFSINのコルシュノフ副長官は、生産性を上げるために過酷な長時間労働を行わせている例があると認めている。

 囚人のためといいながら、かつてのグラーグもかくやと思われる過酷な労働がなし崩しに拡大する可能性はないか。財政危機の中で、ロシアの刑務所運営が注目されている。

  
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。

関連記事

新着記事

»もっと見る