日本の「国家としてのあり方」を考える議論を
また、今回の事件を契機に「自衛隊にも特殊作戦能力を」「海外諜報機関の設置を」といった議論も噴出しているが、これにも注意が必要だ。自衛隊が海外まで日本人を救出に行くことができるようになるためには、ただ、自衛隊法を修正すればよいというものではない。そのために必要な能力を取得するための訓練や、人事面での見直し、必要な予算の確保など、様々な措置が必要になる。情報機関の再編についても同様だ。前掲の「日本はどのような国家であろうとするのか」を考えていく上で、その中での自衛隊や対外情報機関の役割について大局的な観点から考えていく際に議論されるべき問題だ。一時の感情に任せて、対症療法的な視点から議論するべき問題ではないだろう。
いずれにしても、今回の湯川・後藤両氏の拘束・殺人事件は、日本政府だけでなく日本国民に対して「積極的平和主義」への覚悟が今一度問われた事件であるといっていいだろう。今回の悲劇を受け、今後、日本国内でどのような議論が行われるのか、期待したい。
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