安保激変

2015年2月4日

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辰巳由紀 (たつみ・ゆき)

スティムソン・センター日本部長

キヤノングローバル戦略研究所主任研究員。東京生まれ。国際基督教大学卒業後、ジョンズ・ホプキンス高等国際問題研究大学院で修士号取得。在米日本大使館専門調査員、戦略国際問題研究所(CSIS)研究員などを経て2008年より現職。2012年よりキヤノングローバル戦略研究所主任研究員を兼任。専門は日本の防衛政策、日本の国内政治、日米安全保障関係、米国の対アジア安全保障政策。

国際社会で一定の役割を果たすことを目指す以上
テロは日本にとって他人事ではない

 既にお2人が亡くなるという結果が出てしまった以上、どのような対応をすべきだったのかについて議論し続けても「たら」「れば」論の応酬にしかならない。これからの日本に求められているのは、いくつかの問題について今後、日本が一独立国家としてどうかかわっていくべきかをしっかりと議論することである。

 第一は、テロリズムという脅威に対して日本がどのような姿勢を取るかである。日本がこれまでテロの被害と全く縁がなかったわけではない。よど号ハイジャック事件や、オウム真理教による地下鉄サリン事件、ペルー日本大使公邸占拠事件などを経験してきている。それでも2001年の9.11以降続いているイスラム教過激派集団によるテロ事件については、日本はこれまでどこか他人事のように考えてきたフシがある。そのため、10年前の自衛隊によるインド洋での給油活動やイラクでの復興支援活動についても、「自衛隊を出せば日本がテロの標的になる」といった的外れの批判がまことしやかに行われてきた。今回も、安倍政権が打ち出した中東支援策が、事件の引き金になったというような批判が行われている。

 しかし、批判の対象になっている安倍政権による中東支援策は、人道支援や、インフラ支援など、いわゆる軍事的支援とは真逆の性質のものだ。しかも、日本は、現在、米英が主導するISILに対する空爆をはじめとする軍事作戦には一切、参加していない。むしろ、今回の事件ではっきりしたのは、国際社会で日本が一定の役割を果たすことを目指す以上、テロは日本にとっても他人事ではないという冷酷な現実ではないだろうか。

 「危ないから」といって他国とのかかわりを最小限にし、国際社会でもほとんど顧みられない存在になることを望むのか、それとも、ある程度のリスクは覚悟して「国際社会の安定と繁栄」という目標のために経済支援など様々な施策を通じて積極的に他国と関わっていくことで、日本の国際社会での地位を確立していくのか。テロとの戦いが国連総会や安保理をはじめとする、あらゆる多国間会議で取り上げられるような重大問題になっている以上、テロにどのように対峙するのかは、国際社会での日本のあり方として何を目指すのかに直結する大問題なのである。

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