2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月12日

 米政府は、米国と東南アジア間の安全保障・経済協力の強化が、地域の平和と安定、法の支配の改善に繋がるのだと説明する必要がある、と論じています。

出典:Murray Hiebert& Phuong Nguyen,‘Time for Closer Naval Ties between the United States and Vietnam’(CSIS, January 8, 2015)
http://csis.org/publication/time-closer-naval-ties-between-united-states-and-vietnam

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 ベトナムも他の東南アジア諸国と同様、軍事近代化を進めていますが、越人民軍は、いまだに主要装備品の約9割をロシアから調達しており、ソ連崩壊に伴う同盟解消後もロシアの影響が色濃く残っています。

 しかし、非軍事・海上法執行分野においては、ロシア以外の国々とも積極的な協力を進めつつあります。それは、米国、更には日本との関係にも現れています。例えば、2012年12月に訪越したケリー国務長官は、同国に1800万ドルを支援し、人道支援・災害救援能力強化のため、越海上警察に対する人員訓練及び5隻の巡視船供与を行うこととしました。

 日本との関係では、安倍総理が就任後初の外遊先として2013年1月にベトナムを訪問し、同年5月と9月には、防衛省の能力構築(キャパシティ・ビルディング)支援事業の一環として潜水医学セミナーを開催した他、2014年7月には、ODAの枠組みを通じて計6隻の中古巡視船を供与する方針が決定されました。

 本論説は、こうした海上安全保障協力を米越海軍間の協力にまで拡大すべきというもので、それが実現するに越したことはありません。現在ベトナムは、カムラン湾において、潜水艦訓練施設や兵站施設の開発を進めています。この中心事業主はロシアですが、越政府は、開発後の港を越・露以外の海軍にも開放する意向を示しています。これは、歴史の教訓に裏打ちされているように思います。中越間では南シナ海をめぐり、1974年にパラセル紛争が、1988年にスプラトリー諸島ジョンソン南礁沖海戦が発生しています。2度の武力衝突が発生したのは、ちょうど米ソのプレゼンスが同地域から縮小した時期に当たります。こうした教訓に鑑み、ベトナムは、米露を含む複数国のプレゼンスをカムラン湾に呼び込むことで中国を牽制しつつも、特定大国に傾斜しすぎることなく可能な限り自律性を維持しようとしているのでしょう。

 こうした流れの中で日本が協力できる余地としては、上記のような非軍事・法執行機関への支援に加え、越海軍潜水艦部隊の育成があります。越海軍は、ロシアから6隻のキロ級潜水艦を導入し、海洋における対中抑止力を強化している最中ですが、効果的な潜水艦運用には、船体だけでなく人員の確保・養成も必要です。現在ベトナムは、同じキロ級潜水艦を運用しているインドから支援を受けつつありますが、ここに安全かつ高度な通常潜水艦の運用実績を持つ日本が参画することで、日越印の三カ国協力を目指すことも検討の価値があるでしょう。

  
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