8月21日付の英フィナンシャル・タイムズ紙で、Kurt Campbell元米国務次官補が、日中間の対立が激化し、長期化すれば、アジア諸国は、日中いずれかの選択を迫られるであろう、と述べています。
すなわち、これまでアジア太平洋諸国の多くは、米国と政治・安全保障上の関係を維持する一方で、中国と経済・通商上の関係を発展させてきた。米国は中国の台頭を支持し、中国はアジアにおける米国の軍事的プレゼンスと指導力に反対しなかった。既存勢力の米国と台頭する中国との間にはこのような取引があり、基本的にこれが40年以上にわたるアジア全域の先例のない前進を支えてきた。
しかし今、このような戦略的設定が米中で、そしてアジア全域で詮索されている。米国の一部では、米国がいわゆるトゥキディデスの罠に陥り、中国が米国に代わって世界の指導的役割を果たそうとしているのではないかと懸念し、他方中国は、米国の同盟諸国と前方展開された米軍は、中国の台頭を阻止しようとしていると警戒するようになった。
皮肉なことに、アジアで政治的、経済的に成功した豪州、シンガポール、インドネシア、韓国のような国は、米国と政治、安全保障上緊密な関係にある一方で、中国と重要な経済関係を有している。
今日のアジアでの緊張にもかかわらず、中国の政治指導層も米国の政府高官も、アジア諸国に戦略的選択を呼びかけていない。もしアジア諸国が公式に、本気で米中のどちらかを選ぶようになれば、アジアは急速に新しい冷戦になるであろう。実際にはアジアの中級国家は米中の間でバランスを取り、米中双方と良好な関係をとるという、地域を安定させるような外交を実施している。
アジア諸国にとって近い将来の戦略的分岐点は、米中間の微妙な選択ではなく、日中間の厳しい選択であろう。
日本が戦後の自制を捨て、中国に対する不信を強め、中国の強引な政策で権利を侵害されている国との連携を強めているのに対し、中国は日本の積極的政策を阻止しようとするだろう。現在アジア諸国は、米中の政策を比較考量する圧力は感じていないが、日中間の対立が激化し、長期化するにつれ、アジア諸国はいずれかを選択するようになるだろう、と述べています。
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キャンベルは、中国が「韜光養晦」の外交姿勢を変え、米国の覇権に挑戦するようになった今でも、アジア諸国は米中双方と良好な関係を維持しようとしている、と言っていますが、国により態度は異なります。中国との領有権争いを抱えているベトナム、フィリピンは中国と対立し、米国に接近しています。