全体としてアジア諸国が米中との関係をどう律しようとするかは、米中関係の推移によります。米国は最近、中国に対する警戒感を高めており、米中関係の対立が厳しさを増せば、アジア諸国は米中双方と良好な関係を維持することはそれだけ困難になります。
キャンベルは、アジア諸国は米中間の選択よりは、対立が高まっている日中間の選択に迫られるだろうと述べていますが、現象的な対立は日中間であっても、戦略的な対立は中国と日米同盟です。したがって、日中間の対立と米中関係を分けて考えることはできないのではないでしょうか。
キャンベルは、日中間の対立が激化し、長期化すれば、アジア諸国はいずれかを選択するようになるだろうと言っていますが、アジア情勢に詳しいキャンベルがこのように言っていることは、米国の識者が、日中関係の将来に危機感を持っていることを示すものと言えるでしょう。
なお、この論説は「トゥキディデスの罠」に触れていますが、これはトゥキディデスが著書「戦史」で、ペロポネソス戦争が起きたのは、アテネの台頭がスパルタの既存の地位を脅かしたためであると述べたことを指すものであり、新興台頭国が既存の覇権国を脅かす場合、戦争になる可能性があることを示唆するものです。
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