2024年11月22日(金)

J-POWER(電源開発)

2015年2月16日

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 「石炭ガス化」実証プラント
  大崎クールジェンが動き出す

 中国電力とJ-POWER(電源開発)の共同出資による事業会社「大崎クールジェン」が進めるこの実証試験の名は、「石炭ガス化燃料電池複合発電実証事業」―通称、大崎クールジェンプロジェクトという。石炭火力でありながら将来的には温室効果ガスをほとんど排出しない「ゼロエミッション」の実現を目指す道筋が示された、政府が掲げる「Cool Gen計画」に因む命名である。

貝原良明氏
大崎クールジェン株式会社
代表取締役社長

 このプロジェクトの使命について、同社の貝原良明社長はこう話す。
 

 「2012年度から約10年の計画で始まったこの事業は3段階に分けて実施します。これらを成功裏に終わらせて世界に類を見ないほど高効率でクリーンな石炭火力の商用化に道が開ければ、国内はもとより海外へのインフラ輸出にも展開し、アジアなど経済新興国の発展と地球規模の環境問題に大きく貢献することができるのです」
 
 

 そこに向けた18年度までの第1段階では経済産業省の補助事業として、IGFC実現のための基盤となる「酸素吹石炭ガス化複合発電(IGCC)」の基本性能と信頼性、運用性、経済性などを検証する。従来方式の石炭火力発電では微粉炭を燃やして得られる蒸気でタービンを回して発電するが、ここではガス化炉に粉末状の石炭と酸素を投じて水素などの可燃性ガスを発生させ、これを燃やしてガスタービンを回すと同時に、その排熱から蒸気を生成して蒸気タービンも動かす複合発電とする。これにより発電効率は飛躍的に向上し、出力50万kW程度の商用機を想定した場合で46%(送電端)に達する見込みである。相曽健司副社長によれば、この数値は「これまで海外で先行してきたIGCCの運用実績を寄せつけない世界最高値で、従来の発電方式と比べて約15%のCO2削減効果が期待できる」という。

大型設備の搬入を終え、その全容が見えてきた大崎クールジェン。
(上)高温の石炭ガスから蒸気を生成するための熱回収ボイラ。全長40mを超える巨大設備だ。(下)石炭ガスを燃焼して発電するガスタービン。
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 また、空気の約8割を占める窒素を予め取り除いた酸素でガス化させる「酸素吹」技術を採用することで、「空気吹」に比べて可燃性成分を約2倍に高め、効率よくガスを取り出す仕組みを確立する。
「こうすると、精製されたガスに含まれる一酸化炭素と水素の割合も高まり、これらを使った燃料や化学原料への多目的な用途の広がりも望めるのです」(相曽氏) 

「EAGLE」の成果を継承
 究極の石炭火力発電を目指す

 第1段階ではこのほか、従来の方式ではあまり使われなかった低品位炭を含む多炭種への適用性試験や、商用機での設備利用率を高めるのに不可欠な長時間耐久性試験などを実施するが、酸素吹IGCCの技術も含めてこれらはすべて、福岡県北九州市のJ-POWER若松研究所で続けられてきた「EAGLE(多目的石炭ガス製造技術開発)」プロジェクトの実績を土台とするものである。独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)との共同事業であるEAGLEでは、世界トップレベルのガス化効率を達成し、CO2分離回収にかかる消費エネルギーを削減するなど大きな成果を見た。

大崎上島に隣接する長島は、瀬戸内海の鏡のように滑らかで穏やかな海域に浮かぶ。対岸には連続テレビドラマで話題の竹原市を望む。
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 大崎クールジェンのIGCCは16年5月には試運転に入り、17年3月より本格的な実証試験を開始する。これと並行して第2段階としてCO2分離回収設備の準備に入り、石炭ガスが燃焼する前の段階で水蒸気を加えてCO2濃度を高め、効率よくCOだけを取り出す技術の確立を急ぐ。

 その後予定される第3段階では、IGCCに燃料電池を組み込んでさらなる高効率を目指すIGFCの実証試験に移行。CO2分離回収の過程で残された水素リッチガスを燃料電池の燃料として利用し、さらにガスタービンの燃料としても再利用するトリプル仕様の複合発電だ。

 ここに至ると商用機での発電効率(送電端)は55%を超え、従来方式による発電効率を14ポイント以上も押し上げたうえ、CO2の削減期待値は約30%となる。