2024年6月17日(月)

科学で斬るスポーツ

2015年2月9日

 選手の指導で大事にしたのは、「自分で嫌だったことはしない」「選手優先」ということだ。選手には、試合後に結果を振り返り、問題点に気づいて欲しいと思っている。1軍の一流選手は失敗の原因に気づく。その時点で反省できるので、コーチのやることは確認だけ。何もいうことはない。ただ2軍の選手は、問題点に気づかないことが多い。ファイターズでの5年間の経験で言えることは、客観的に振り返れない子は1軍に上がってこない。教えるのではなく、自ら気づく力を育てる。それがコーチの仕事だと思った。日本の野球界では、そういうやり方はしない。何しろ時間がかかるし、じれったいからだ。コーチが指摘してあげることは、すぐに効果がでるが、実は長続きしない。将来、つまずいた時に解決できない。だからこそ、コーチング※1の理論、身体運動を力学的にとらえる「バイオメカニクス」を学びたいと思った。

※1「コーチング」
コーチする側が選手との対話を通じて、選手の気づき、自己実現を促す人材育成法。観察したことを伝えたり、質問したりすることで、問題解決に必要なスキル、考え方を備え、行動できるようにすること。教えることではなく、選手が内発的な動機に基づいて行動するのを支援する。ビジネスの世界でも注目される。スポーツ界で、コーチングが成功しているのは日本水泳連盟の競泳陣。平井伯昌コーチらは「科学的なデータも大事だが、それを選手が理解し、自分で考える方がもっと大事」と語る。

昨年11月に開かれた日本野球学会のシンポジウムで野球の科学について語る吉井氏(右)と仁志氏

自ら考える習慣 大切にしたい「身体感覚」

 大リーグに行って、最初の春に投手コーチから言われたことは今も忘れない。「理人、お前のことを一番知っているのはお前なんだから、特徴などの何でもいいから情報を教えてくれ」と。日本では言われたことは一度もなかったのでとても新鮮だった。

 自分は左足をあげた時、お尻が後ろ(一塁側)にそれる癖があった。こうすると2シーム(シンカー、シュート系ボール)は投げやすくなるが、球速は落ち、打者が投球を見やすくなって打ち込まれた。この点も伝え、しっかり見てもらえた。大リーグのコーチは、常に選手まかせでやりやすかった。選手と対等かあるいはそれより下の目線で選手にかかわってくる。どちらかというと強制的な日本のコーチとの違いを感じた。

 なぜこういうやり方に馴染んだのかというと、日本のプロ野球に入団した時、コーチの言っていることがよくわからず信用してなかったことがある。「グラブを(体の前で)長く持て」など体の使い方などについてコーチに、言われたことをやっても自分の感覚と合わなかったからだ。


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