テニスの四大大会(グランドスラム)の一つ全米オープンで、日本人男子初の決勝に進出した錦織圭。躍動感あふれる24歳のプレーに、日本中から期待が集まったが、残念ながら優勝はならなかった。しかし、190cm前後のランキング上位の強敵を次々に倒し、最後まであきらめないプレースタイルは日本だけでなく、世界中の多くのファンを魅了した。
4時間に及ぶフルセットを2試合も経験するなど、その驚異的な体力を印象付けた。そのスタミナという最大の強みを生み出したのも、技術的な進化、常に前向きなメンタル面での成長だった。昨年暮れからコーチに就任したマイケル・チャンの存在も大きいだろう。17歳で全仏オープンを制したチャンからグランドスラムの光景と、それを上り詰めるための多くのことを学んだからだ。時間の問題とも言われ続けながら、グランドスラム上位に食い込めなかった錦織が今回、なぜ決勝に進出できたか、背景に迫る。
安定感増したサービス
まずは、錦織の成長を示す男子プロテニス協会(ATP)のデータをのぞいてみよう。プロ宣言した翌2008年と、今年の全米オープンまでのデータを比較してみると興味深いことが読み取れる。
錦織のサービスは着実に安定している。サービスエースは増え、1試合当たりの平均エース数は4.6回。実際、全米オープン準決勝ジョコビッチ戦でのエースは5回。ちなみにジョコビッチは13回だった。一方で、ダブルフォルトは減り、サービスゲームの取得率(キープ率)も格段に向上した。7ポイント上昇の84%となった。
一方で、リターンポイントを取得する割合を40%台に乗せ、その結果としてリターンゲームを奪い取る割合を28%まで伸ばした。ジョコビッチのリターンポイント取得率は42%、リターンゲーム取得率は31%であることを見ると、錦織が着実に世界トップクラスに近づいていることがわかる。