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2014年9月29日

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メンタル面、体力面での充実、ひ弱さ消える

 グランドスラムで勝ち進むランキング上位の選手は何が違うのか。最も大きいのがメンタル面での強さの差と言われる。これまでに時間の問題と言われながら、グランドスラム上位に食い込めなかったのは、「メンタル面のひ弱さがあった」との声もある。13歳から海外で暮らす錦織は、過酷な競争社会で、ある意味、壁にぶち当たっていたのだろう。そこに風穴を開けたのが、チャンとの出会いでもあった。体の小さいハンデを逆手にとって、トップに君臨したチャンの経験に基づく厳しい指導は、錦織の心に響いたことは想像に難くない。

 メンタル面での安定は、攻めの姿勢と、最後まであきらめないプレースタイルとして表出した。その一つのデータが図10だ。これもIBM社のデータだが、サービスゲームを、相手にブレークされる危機に直面した時、どれくらい粘ってゲームをキープしたかを示したものだ。

 これをみると錦織はブレークポイントの危機に直面する機会も多いが、粘り強く、しっかり奪い返し、ブレークポイントをセーブしている率も極めて高い。そのセーブ率は79%と4強の中で群を抜く。

 関西大学人間健康学部教授の小田伸午さん(スポーツ科学)は、「5セットマッチを2度制したのは、心の壁を乗り越えたからだ。試合中に自分を信じられるようになったからだ」と分析する。

 こうしたメンタル面での成長には、体力面、スタミナ面での向上も見逃せない。今回は足の指の手術で、1カ月休養できたことも大きいとの指摘がある。プロ選手のツアーはそれだけ過酷だからだ。

 しかし、それだけではない。体力が向上した背景には、チャンによる反復練習もあるだろう。大会期間中のトレーニングによって、体幹が崩れることなく、安定してラリーができていた。

 武井さんは、「走りながら、ぎりぎりで打ち返すなど、体幹が崩れるオフバランスがなくなり、体の切り返しが滑らかだった。中殿筋などお尻回りの筋肉が鍛えられていた。おそらく新しいコーチ陣の指導で、きっちり筋トレしていたのだろう。腰回りをはじめ、全身に筋力がついていた。公式データによれば、体重は68kgで、2、3年前から変化していないが、体は70kgくらいと大きくなっているのではないか」と話す。

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