大リーグ、ニューヨーク・ヤンキースで鮮烈なデビューを飾った田中将大投手は、右肘内側側副靭帯の部分断裂で7月、故障者リスト(DL)入りした。昨年の東北楽天ゴールデン・イーグルス時代の24連勝に続き、前半戦だけで12勝と快進撃を見せつけていただけに、多くのファンは突然のニュースに驚かされた。肘の治療は自己血注射による再生医療が中心で、手術を免れ、リハビリの一環としてすでにキャッチボールを始めている。
大リーグで現在投げる日本人投手では、松坂大輔(ニューヨーク・メッツ)、和田毅(シカゴ・カブス)、藤川球児(シカゴ・カブス)らが肘の手術を受けている。ダルビッシュ有(テキサス・レンジャーズ)も8月に肘の炎症を訴えてDL入りした。肘の故障はなぜ起こるのか、日本人投手に起こりやすいのか、肘痛を回避するにはどうしたらいいかを考える。
腕の振りの加速が大きいほど肘にストレス
「東洋人は肘に何か問題があるのか」
日本人選手の相次ぐ肘の故障(痛み)に、大リーグ関係者の間ではこんな言葉がささやかれているという。しかし、肘の故障はアメリカ、中米出身の選手でも起きている。いいピッチングをしていた日本人投手が突然のように、肘の痛みを訴えて戦列を離れる意外性から発せられたものであり、それだけ日本人が活躍していることの証左である。投手にとって、肘の故障は、肩痛より起きやすいトラブルなのである。
では、なぜ肘を痛めやすいのか。それは、一連の投球動作の中で、前に移動する腰、肩、上腕(二の腕)と異なり、前腕(肘から手首)は後ろに取り残され、中でも上腕と連結している肘に大きなストレス(力)がかかるからである。
この力は、静止していたものが急に加速する時に働く慣性力(止まっているものはずっと止まり続けようとする力)だ。反力ともいう。停止した電車が前進するとき、乗車している我々が後方に倒される力である。