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2014年8月21日

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図4 肘靭帯再建術をした患部。内側側副靭帯を補強するように手首の腱(白い部分)を移植してある(提供:馬見塚講師)

 この治療法を簡単に説明すると、①自分の血液を採取する ②遠心分離という方法で血液の中から血小板が多く含まれる部分を取り出す ③それを患部に注射する――方法だ。血液から取り出した血小板が多く含まれる液体は「多血小板血漿(PRP)」と呼ばれる。この中には靭帯修復に役立ついろいろな物質が含まれている。

 靭帯再建術は、損傷した靭帯を補強するように手首や膝裏の正常な腱を切り取って移植する手法。試合復帰するのに1年から1年半近くかかることから、田中投手は、損傷の程度、チーム事情、個人の意思などからPRP療法にかけたとみられる。ただ、PRP療法は新しい治療法であり、どの程度復帰できるかは、まだ臨床研究の段階にある。

原因の一つは、スプリットボールの多投?

 では、田中投手の肘痛の原因はどこにあるのか。さまざまな要因が考えられるが、日本のプロ野球の全試合を分析するフェアプレイ・データの石橋秀幸社長(慶應大スポーツ医学研究センター研究員)は、田中投手の「投球の組み立て」に注目する。

 石橋さんが、田中投手の楽天時代の2013年と今年ヤンキースでの配球を分析したところ、スプリット(フォーク)の多投が顕著だったという。

 全配球のデータからもそれが伺える(図5)。昨年は、①ストレート36% ②スライダー24% ③スプリット(フォーク)19%の順だったが、今年は、①スプリット(フォーク)26% ②ストレート22% ③スライダー22%の順に大きく変化した。

図5 昨年と今年の田中投手の全配給の内訳(提供:フェアプレイ・データ)
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 石橋さんは、「大リーグでは田中投手のような切れのある、スプリットを投げる投手は少ない。パワーヒッターが多い大リーグでも十分に威力を発揮しているため、キャッチャーもスプリットを中心に組み立てている」と指摘する。

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