2024年12月2日(月)

科学で斬るスポーツ

2014年10月31日

 不世出の逸材として投手、打者の「二刀流」に挑み続けるプロ野球北海道日本ハムファイターズの大谷翔平(20)。入団2年目の今シーズン、投げては11勝4敗、防御率2.61(リーグ3位)、打っても2割7分4厘、本塁打10本の堂々とした成績を残し、チームのエース、中心打者としての存在感を示した。

 それだけに、周りからは「投手として育てるべきだ」「大リーグで本塁打王をとれるスラッガーになれる」と、二刀流をやめ、どちらか一方に専念させるべきだと声も大きくなっているようにも感じる。しかし、筆者は野球少年たちの夢である「投手、打者双方で活躍する一流選手」になりうる大谷がどこまで成長するのか、見てみたい。大谷をどう使うか、日本の野球の在り方を根本から変える可能性を秘めているからだ。プロに入って明らかに体が大きくなった大谷のすごさはどこにあるのか、そしてどこまで進化していくのか。このまま二刀流を続けた方がいいのか。高校時代の映像も分析しながら迫りたい。

5.3勝分を上乗せする大谷の貢献度

 まずは、データをもとに選手を評価する手法「セイバーメトリクス」で大谷を切り取ってみたい。

北海道日本ハムファイターズHPの大谷選手紹介ページ
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 セイバー・メトリクスの日本の第一人者である、統計学者の鳥越規央博士に、今年の大谷の貢献度「WAR」(Wins Above Replacement)を計算してもらった。WARは、打者、投手にかかわらず選手を同じ指標で比較できるもので、平均的なレギュラー選手が出場する場合に比べてチームの勝利数を何勝上積みできたかを示す。計算法は様々あり、ここでは詳細には触れないが、打者大谷、投手大谷についての結果だけを紹介する。

 打者大谷は、1打席当たりどれだけチーム得点増に貢献できるかを示す「wOBA」(weighted On Base Avereage)は、0.365とリーグ平均の0314を大きく上回ったが、打席数が規定打席を下回ったためWARは1.8。つまり1.8勝の上積みに貢献した。

 投手大谷を見てみよう。大谷は投球回数155回3分の1、防御率は2.61の見事な成績を残し、WARは3.5。つまり3.5勝の上積みに尽力した。リーグ1位は東北楽天ゴールデンイーグルスの則本昂大の4.5。2位のオリックス・バファローズの金子千尋の4.3に次ぐ3位だったが、打者の1.8を加算すると5.3。その貢献度は極めて高い。

 鳥越さんは「大谷はすでに打者、投手としても一流と言っていい。チームに貢献する選手であることがわかる。だとしたら、それを使わない手はない」と二刀流の使われ方を正当に評価する。


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