これまで説明してきたように、大谷の投球は、日本的な良さとアメリカの投球術のよいところを合わせた「ハイブリッド」(異種の組み合わせ)とも言えなくもない。
大リーグ的投球術は、つい手投げと見られてしまう。野球評論家の権藤博氏は、日本経済新聞(2014年6月26日付)連載中のコラムで「手投げでメジャー級」と評している。「球が指先から離れる瞬間は一見棒立ちだ。これがいい」「もちろん盤石の下半身があってのことだ」と語っている。
しかし、手投げではない。理にかなった投げ方なのである。
打撃も下半身の強さがカギ
打者大谷にも目を向けてみよう。やはり下半身の強さ、安定性は群を抜く。右投げ左打ちで、軸足は左脚。投球の際の踏み出した脚と同じ。強靱なハムストリングスを持つ下半身は、ボールをとらえる時にぶれることはない。それもすでに高校時代からできていた。図7は、高校時代のバッティングフォーム。ボールをとらえるときの目の高さ、膝の高さがほとんど変わらない。
図7 大谷の高校時代の打撃フォーム(提供:『野球太郎』編集部)
イチロー(ニューヨーク・ヤンキース)が1シーズン最多安打の大リーグ記録を打ち立てたときのフォームの目の上下動はわずか2cm。大谷もこれに匹敵するほど、上下動がない。手首の使い方、力みのないスイング、内角球へ対応、大柄な割には器用な選手と言える。今シーズンは内角球にも対応し、三振が激減した。昨年の全打席(204)において三振する割合は31%だったが、今年は234打席中48三振と20.5%まで減った。選球眼もよく四球が12から21に増えた。
石橋さんは「非凡なセンスを持つ打者であることは間違いない。試合に出れば出るほど結果は残すだろう。大事に育てたい」と言う。