一方、大谷選手の二刀流には、もちろんマイナス点がある。
一つ目は、右投げ左打ちであること。打席に立った時に投球腕へのデッドボールの危険があること。打撃成績がよければよいほど相手投手はインコースを攻めるようになり、野手に比べて多くの役割を果たす右腕をけがしやすい。
右腕の疲労も増す。投手の投球数が増えてくると他の部位に比べ投球腕の疲労度は高いが、これに打撃練習で右腕の疲労が加算されることで、疲労が集中しやすい欠点がある。
二つ目は、タイトル獲得が難しくなる点である。パリーグはDH(指名打者)制であるため投手で出場したときに打席に立てない。また、二刀流を続けるため投手としての登板間隔が専門投手に比べてあく。このため、ホームラン数や勝ち星などを稼ぐ出場試合数が減り、タイトルは獲得するのが難しくなる。
しかし、現在の大谷選手は、投手としても打者としても素晴らしい成績を出しているのは異論のないところであり、馬見塚さんは「彼のために投手と打者の両方の成績を併せて評価する『新しいタイトル』を作って評価してあげてほしい」と訴える。
今後も大谷選手の「これまでの野球界を超える成長」には注目していきたいが、最近気になるニュースが入ってきた。それは、今回のオフシーズンに現在の体重を100キロあたりまで増やそうというのだ。
馬見塚さんは「専門家にトレーニングや食事指導を受けたとしても、急激な体重増加は関節や筋付着部へのストレスの増加や柔軟性の低下が生じ、かつて多くの選手がその後、けがに泣いた。体重が増えても、関節や筋の付着部を鍛えることはできないので、急激な体重増加には身体が『適応』できないのである。これまでの選手と同じ轍を踏んで欲しくない」と強調する。
二刀流を継続することに関し、保守的な野球界の意見は割れているが、筆者は少なくとも成長が完全に止まるとされる25歳、あるいは大リーグ移籍可能時までは二刀流を続けて欲しいと願う。次代を担う少年たちへの夢を与え続けることでもある。この挑戦は、選手育成、障害予防、選手の評価、スポーツ科学など野球界の革命になることは間違いない。いっそうの活躍を願ってやまない。
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