2024年11月25日(月)

Wedge REPORT

2009年8月4日

 こうした中、リコーは2004年以降、複写機の中国専用モデルを開発、中国市場の開拓に力を入れている。専用モデルは基本性能は欧米向けと同様だが「待機時間の短縮機能など機能の一部を絞り込み、(欧米向けの3分の1近い)6000元レベルという低価格を実現した」(今野隆哉・MFP事業本部商品戦略室長)のが特徴だ。

 そのためにリコーが力を入れているのが中国での開発から生産までの現地化と、部品などの現地調達率の引き上げだ。中でも部品の現調率は8割を超えており、「今では金型なども現地で製造できる体制が整った」(今野室長)という。

 さらに現在、中国の3ヵ所に続く海外工場をタイに建設中。「中国に集中し過ぎた海外工場のリスク分散」の狙いもあるようだが、今後はタイ工場をベースに中国以外のBRICs市場向け専用モデルも開発。「中国以外の新興国市場開拓にも本格的に取り組む」(永倉義輝同シニアスペシャリスト)方針という。

 一方、海外での連結売上比率が5割前後とソニーなどと比べそれほど高くないパナソニックも当面、BRICs“プラス”ベトナムの5ヵ国をターゲットに新興国市場の開拓に力を入れ、「海外売り上げ比率の底上げを図る」(パナソニック関係者)。今後、日本市場の拡大が期待できない中で「成長のキーワードは海外にある」(大坪文雄社長)という考えが背景にある。

 とくに力を入れているのが洗濯機や冷蔵庫といった白モノ家電。これらは“省エネ”が売りとなっており、マーケティングに当っては前面に打ち出すが、同時にデザイン面などは地域性に配慮。このほど国内に加えて、中国、ベトナム、欧州(ドイツ)に生活研究所を開設、「市場ニーズを汲み上げた地域密着型の製品開発とも本格的に取り組む」(パナソニック関係者)方針だ。こうした新興国を中心とした地域密着型の製品開発はこれまで欧米市場中心の世界標準モデルを各市場に一斉投入してきた自動車業界でも取り上げようという気運が盛り上ってきた。

自動車業界も、新興国市場に期待

 6月25日、就任後初の記者会見に臨んだトヨタ自動車の豊田章男社長は「これからの商品開発は地域中心に大きく舵を切る。(欧米市場を中心とした)これまでの全方位フルラインナップから脱却、必要十分なラインナップに見直しし、お客様ニーズを先取りした新コンセプト車を開発していきたい」と強調、商品開発の方向転換を宣言した。

 そこには今回の世界的な景気後退局面が回復したとしても、「欧米市場はこれまでのような成長は期待できない」(関係者)という判断があるのだ。

 ただ自動車産業は「量産によって収益性を確保する」典型的な産業。今後、量の確保と地域ニーズの把握をどう整合させていくのか。新たな開発・生産モデルの構築が必要になってくるのではなかろうか。

 世界市場で圧倒的なシェアを持つホンダの二輪車事業では「むしろモデル集約化」(ホンダ関係者)の方針を打ち出し、注目されている。ホンダの二輪車事業は早くから海外進出を加速、現在では22ヵ国、32拠点で現地生産しているが、生産機種はそれぞれの市場ニーズにマッチした専用モデル的な機種が多い。


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