12万を超えるフォロワーを抱え、平日は毎日、積極的につぶやく。この内容が自衛隊の公式アカウントとは思えない面白さで、ネット的に秀逸であるとして人気を集めているのだ。最近のツイートを紹介すると、
「トイレに付いてる音姫の自衛隊版って無いかね。 「対水上戦闘!CIC指示の目標 攻撃始め! 主砲撃ち〜方始め!ドンドンドン!」 とか「弾着(だんちゃーく)!今!!」とか。 腹痛と戦う男達へ捧げる円舞曲みたいな。 売れないな!」
https://twitter.com/miyagipco/status/572333540186066944
さらにトイレネタをたたみかけるように、
「一歩前進 捧げ銃 帽振れ」 自衛隊の施設の何処かに貼られている紳士の約束だよ!機会があったらトイレを借りてみよう! あ、言っちゃった」
https://twitter.com/miyagipco/status/572335296357920768
実にゆるいテンションで、ゆるいテーマを取り上げる。そのツイートの中で、さりげなく自衛隊の日常を伝えている。一般的な生活を送っている限りは縁遠いはずの軍事用語も、あまり違和感を感じさせない。このスタイルでなければ難しいことだろう。
自衛隊員の募集という大きな目的があるので、必然的にターゲットは若者。12万フォロワーという数の威力を考えると、20代の間で自衛隊への好感度が上がっていることにも、少なからず影響を与えているのではないだろうか。これは若年層を対象にしたツイッター広報の好事例と言えるのかもしれない。現在、自衛隊では他の地方協力本部でも公式アカウントの運用を進めている。
「華麗なる公式」の広がりに期待
一般企業にも、同じように人気を集める公式アカウントの運用例がある。「おもしろ企業公式アカウント」として、NAVERでもまとめられていた。
http://matome.naver.jp/odai/2137905274433219701
「目の付けどころがわかりません」とつぶやくシャープ、「お・も・て・え・な (´Д`) 【ご家庭にあるタニタの心の中】」とつぶやくタニタ、フォロワーからの「○○は取り扱っていますか?」という質問に対してユーモアたっぷりに返信するニッセンなど、どれも担当者の遊び心を感じさせる公式アカウントだ。前述の自衛隊宮城地方協力本部とともに、これらのアカウントは「華麗なる公式」と呼ばれてハッシュタグが付けられている。
誰がどのような立場で見ているか分からないSNSで、ときに炎上のリスクと隣り合わせの公式アカウント。大手企業では特に「守り」に入らざるを得ないテーマだ。ゆるい運用を勇気と見るか愚挙と見るかは企業の価値観によって異なるだろうが、多数のフォロワーを獲得し広報に大きく貢献しているのは事実。かつては内部情報を知る機会が限られていた自衛隊も、ツイッターを通して身近な存在となりつつある。今後も同様の取り組みが広がっていくのかもしれない。
個人アカウントとは異なり、人事異動や退職によって「中の人」が交代することもある。この季節、フォロワーに卒業の報告や別れのあいさつをする公式アカウントも出てくるだろう。ツイートのゆるさ、面白さにも一貫性が必要だということを考えると、個のスキルに負うところが大きいという課題はある。さまざまなアカウントで運用ノウハウが継承され、華麗なる公式が増えていくことを期待したいと思う。
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