ドイツでは再エネの導入により火力発電所の稼働率と収益力が低下したために、電力会社は発電所の閉鎖を行ったが、このままでは停電の可能性があるために閉鎖には政府の同意が必要な制度になった。いま50の発電所が対象になっていると報道されている。閉鎖が行われた場合には供給に必要な設備の確保をどのように図るのか、これから制度の議論が行われる。
1990年に電力市場を自由化した英国では、老朽化した発電設備の閉鎖が続いたものの、新たな設備を建設する事業者は登場しなかった。かつて最大電力需要に対し17-18%あった予備率は今6%まで低下し、16/17年には需要量次第では2%になると予想されている。設備新設を自由化された市場でどのように進めるのか、英国政府は他国に先駆けて新制度を導入した。英国が独自政策を導入したのは発電設備新設のためだけではない、温暖化対策、自給率向上の目的とした原子力と最エネの導入も独自の政策で進めている。
英国が初めて試みた容量市場制度への批判
EUでは、域内のエネルギーを効率よく利用するためのエネルギー同盟が設立される。最大の目的は、いまOECD欧州内の天然ガス需要量の3分の1、EUの原油輸入量の3分の1、石炭輸入量の5分の1を供給するロシアへの依存度を低減することだ。ガス依存度低減のために液化天然ガス受け入れ基地の増設などが図られるが、域内の送電線網の強化を通じ他国の発電設備利用も促進されることになっている。
さらに、自由化された市場で発電設備を確保する手段として容量市場と関連法案の創設も織り込まれている。容量市場とは、発電設備を保有する事業者に対し発電量の有無にかかわらず一定額の支払いを行う制度だ。稼働率の低い発電設備も最大電力需要を賄うためには必要とされるが、その設備を確保するために稼働率に関係なく設備があれば支払いを行うわけだ。
EU諸国のなかで英国が初の容量市場の入札を昨年12月に実施したが、その結果については多くの批判が浴びせられた。入札の対象となった期間は2018年、対象とされた設備量は約5000万kWだった。入札に参加した事業者が保有する設備料は7500万kWだったので、約4分の3の設備が契約対象として選定された。設備が受け取る入札価格は1kW当たり19.40ポンド(約3500円)だったので、50万kWの設備保有者は17億5000万円を受け取れることになる。
批判が起こったのは、新規設備を確保することが主目的とされたが、新規設備は262万kW、全体の5%しかなかったことによる。加えて、全体の70%を占めた既存設備のうち923万kWは一部バイオマスの混焼を含む石炭火力であったことから、温暖化政策にも逆行し、既存設備を保有する事業者に棚ぼたの利益をもたらすとの批判も出た。
英国政府はオークションの結果の全負担額は9億6000万ポンド(約1730億円)、標準家庭の負担額は11ポンド(約2000円)に留まり成功であったとしているが、新規設備の導入が限られるのは、負担額が少なすぎるためとの批判もある。