最近、欧州あるいは米国を旅行すると、以前にも増して物乞いをする人の数が増えているように思う。特に、普通の格好をした人から、小銭をせびられることが時々あり、驚くことがある。先月もパリの北駅で列車の発車待ちの間、普通の旅行者風の2人から小銭をたかられた。
また、以前は赤ん坊を連れていた物乞いが多かったが、最近は犬あるいは猫のペットを連れている物乞いも多く見かけるようになった。私のような犬好きは、犬と目が合ったらダメで、つい小銭を渡してしまうことになる。
物乞いが欧米で増えているように見えることからも分かるように、多くの国で富める者はより豊かになり、貧しいものはより貧しくなっている。貧富の格差は、日本を含む多くの国で拡大している。この貧富の格差の拡大は社会にとり大きなリスクと言われている。
一方、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第5次評価報告書が発表されつつあるが、気候変動、地球温暖化は大きなリスクとされている。温暖化対策が格差拡大につながるケースもあり、二つのリスクを同時に解決することが難しいことも時としてある。格差拡大と気候変動のリスクをどう考えればよいのか。
洪水、食料生産減…
気候変動がもたらす様々なリスク
地球温暖化、気候変動問題は国連のIPCCにて評価報告書が作成され、現状分析、影響、その影響を緩和する政策などが分析されている。1990年に最初の報告書が出され、2007年に出された第4次評価報告書の後、現在は第5次評価報告書が作業部会ごとに順次発表されている最中だ。2013年9月には第1作業部会の科学的根拠が発表され、温暖化の原因は人為的活動が支配的原因であった可能性が極めて高い、95%以上の可能性、とされた。
今年3月下旬には第2作業部会の「影響、適応、脆弱性」が公表された。私も査読者を務めた第3作業部会の「緩和策」は4月に発表される。第2作業部会の報告書の特徴は、気候変動が引き起こす様々なリスクに触れている点だ。海面上昇による洪水のリスクは以前から指摘されており、多くの人にも認知されているが、海面温度が上昇することにより場所によっては漁業が大きな打撃を受けるリスク、降雨の減少により小麦などの生産が減少するなど食物の供給に関するリスクも指摘されている。